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加納光於:鳥影-遮るものの変容
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 11月 15日

《羽音-J.M.W.ターナーの不穏に倣って》
Y-7 2010年|oil on canvas board
画像提供:ギャルリー東京ユマニテ|Copyright © Mitsuo Kano

加納光於(かのうみつお)は1933年東京生まれ。独学で銅版画を学び、’50年代半ばから作品を発表。’60年代にはリュブリアナ国際版画ビエンナーレ、東京国際版画ビエンナーレなど、数々の国際展で評価を高め、日本を代表する作家のひとりとなりました。その後’80 年代からは色彩豊かな油彩作品を発表。国内外の美術館で個展を行い、2000 年に愛知県美術館で大規模な個展が開催。’05 年には再度、リュブリアナ国際版画ビエンナーレの日本代表として版画作品を出品。近年はほぼ隔年ごとに新作の大作を発表し、精力的に活動を続けています。

加納の作品タイトルは、文学や生物学に関連するものが多く見られますが、今回は展覧会タイトルにもなっている《鳥影-遮るものの変容》。加納は60 年代後半に世界一豪華な広場と称されるブリュッセルのグレンプラスを訪れ、その際、野鳥の市に出会いました。沢山の渡り鳥が鳥かごの中で、ある瞬間一斉に同じ方向に向かってホバリングしたシーンが、その衝撃とともに生命の不思議さを感じ、今でも目に焼きついているといいます。今回の展覧会タイトルにもなっている新作は横7mにも及ぶ大作で、抽象的で力強い今までの作風はそのままに、新たに具体的なシルエットにより、イメージが強調されるものとなりました。

さらにもう一つ、紙に描かれた作品シリーズのタイトルは、《羽音-J.M.W.ターナーの不穏に倣って》。イギリスを代表するロマン主義の画家ターナーは写実的でアカデミックな作品から、あるきっかけを境に一転し「色彩とは何か」というテーマに辿り着き、より抽象的な作風へ変貌していきます。加納は80 年代からそれまでの単色の銅版画から、色彩の洪水ともいわれる色鮮やかな油彩を描き始めました。それは、色彩への強い関心が発端となったもので、作品は常に驚くほどの執着ともいえる色彩の場面が繰り広げられてきました。前回の作品ではそれまでとは変わって落ち着いた色調のグラデーションが見られましたが、今回は加納独特の力強さはそのままに、さらに違ったかたちのシルエットが加わり、よりふくよかで広がりのある様々なイメージを見せてくれます。

今回の個展は、1年半ぶりの新作展になりますが、油彩、カンヴァスの大作(194.0x715.0cm)の他、油彩、紙の20数点を展示いたします。 次々と新たな展開を見せる加納光於の新作をお見逃しなくこの機会に是非ご高覧下さい。

加納光於 KANO Mitsuo
1933 東京神田に生まれる 1953 独学で銅版画試作を始める

主な個展
1960 ’62 南画廊(東京) 1972 「“加納光於-大岡信共作展”アララットの船あるいは空の蜜」南画廊(東京)
1980 「加納光於の版画-瀧口修造とともにー」福岡市美術館
1980 「加納光於-PAINTING 1980-1983」北九州市立美術館(福岡)
1993 「色彩としてのスフィンクス-加納光於」セゾン美術館(東京)、徳島県立近代美術館
1997 「葡萄弾-加納光於 オブジェ1968-1997」愛知県美術館
2000 「加納光於 《「骨の鏡」あるいは色彩のミラージュ》」愛知県美術館
2003 「加納光於 《フィロゾーマ》 2003 oil on paper & color intaglio」ギャルリー東京ユマニテ
2004 「加納光於 《Serpentinata》 2004 oil on canvas」ギャルリー東京ユマニテ
2006 「加納光於 《充ちよ、地の髭》- W.B 頌 oil on canvas 2005-‘06」ギャルリー東京ユマニテ
2007 「加納光於 《止まれ、フィボナッチの兎》 oil and water color on paper」ギャルリー東京ユマニテ
2009 「加納光於 《身振りのアルファベット、あるいは跳ね馬のように》 oil on paper
2009-2010」ギャルリー東京ユマニテ

主なグループ展
1957 ’60 ’62 ’64 ’66 ’68 ’79 「東京国際版画ビエンナーレ展」(東京)
1959 ’61 ’63 ’67 「サンパウロ・ビエンナーレ展」サンパウロ近代美術館(ブラジル)
1959 ’61 ’63 ’65 ’67 ’69 ‘04 「リュブリアナ国際版画ビエンナーレ展」リュブリアナ近代美術館(ユーゴスラビア)
1971「戦後美術のクロニクル展」神奈川県立近代美術館
1992 「本の宇宙-詩想をはこぶ容器」栃木県立美術館
1995 「戦後文化の奇跡 1945-1955」目黒区美術館(東京)、兵庫県立近代美術館、広島市現代美術館
1998 「瀧口修造とその周辺」国立国際美術館(大阪)
2005 「リュブリアナ国際版画ビエンナーレ展」リュブリアナ(スロヴェニア)
2006 「武満徹 Vision in Time 展」東京オペラシティアートギャラリー
「詩人の眼-大岡信コレクション展」三鷹市美術ギャラリー、福岡県立美術館、足利市立美術館(栃木)
2007 「澁澤龍彦-幻想美術館」埼玉県立近代美術館

朗読会&トーク 『パピルスの<夢>』
出演:藤原安紀子、加納光於
日時:12 月18日(土)14:00- 入場無料(予約制)
問い合わせ・申し込み:ギャルリー東京ユマニテまで電話かメールでお願いいたします。 会期中に、今回のカタログに詩を寄稿頂いた詩人藤原安紀子氏の朗読と加納氏とのトークイベントを開催いたします。是非ご参加ください。
■藤原安紀子(ふじわらあきこ)
1974 年京都生まれ。2002 年「現代詩手帖賞」受賞、2005 年『音づれる声』(書肆山田)で「歴程新鋭賞」受賞。

※全文提供: ギャルリー東京ユマニテ


会期: 2010年12月6日(月)-2010年12月25日(土)

最終更新 2010年 12月 06日
 

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