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長谷川学:屋島
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 10月 26日

画像提供:Showcase|Copyright © Manabu Hasegawa

長谷川学(1973年、東京生まれ)は2000年に多摩美術大学美術学部絵画科版画を卒業し、作品の発表を続けてきました。2001年にキリンアワード2001で準優秀賞を受賞、さらに2010年には第13回岡本太郎現代芸術賞の特別賞に選ばれ大変注目されています。

長谷川の作品は、彫刻家のデッサンがものの質感を的確に捉えることで、ものの本質に近づくように、金属やダイヤモンドの質感を鉛筆のトーンと支持体の紙の造形によって作り上げた立体的なドローイングとでも言えます。

長谷川の作品の原点は平家物語冒頭にあるようにものの「存在」に対する問いかけでもあります。

祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす
おごれる人も久しからず ただ春の夜の夢のごとし
猛き人もつひには滅びぬ ひとへに風の前の塵に同じ

栄華の絶頂と威勢を誇った平家が滅びゆく物語には、いかに圧倒的な欲望や権力も一方の夢として詠われています。この世界においては、一度は絶対的なものとして認識されたものでも、時が変わればその存在を証明する事さえ困難になってしまいます。

長谷川は過去には千体のマリア像や頭蓋骨を反復してつくる修行僧のような制作に臨みました。その経験をふまえてから彼の作品は理屈ぬきで作品から「何か」を感じさせること「存在」の有る無し以上にそこにある「何か」たとえば「気」のようなものを表現しています。単なるものの再現でないその目で見えないものの「真実」を追求しています。

今展のタイトル「屋島」は、世阿弥が平家物語を基に作った能で、義経の亡霊が旅の僧に平家との戦を物語る修羅物です。

紙に鉛筆という最も身近で儚い素材で力の象徴としての武器の表面だけの抜け殻をつくり、漆黒の蒔絵の箱の宇宙のようにグラファイトのグレーで小さな宇宙を作り上げます。存在することしないことという太極をも考えさせる佇まいをもつ長谷川学の「屋島」展に是非ご期待下さい。

レセプションでは、水町歌橘に「屋島」を演奏して頂き、銃と三味線で特異な空間を作り出します。

※全文提供: Showcase


会期: 2010年11月4日(木)-2010年11月20日(土)11:00-19:00|日・月・祝日休廊
レセプション:  2010年11月4日(木)17:30-19:30

最終更新 2010年 11月 04日
 

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