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永島千裕:alien age
編集部ノート
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 9月 20日

人類は古代から人の顔や身体を有しながらも人間ではない「生命」を多く生み出してきた。ギリシャ神話における異形の神々たちには、半人半馬のケンタウロスがいるし、日本にはさまざまな妖怪が描き表されている。現代でも人型ロボット、SF映画やホラー映画に登場するモンスターやクリーチャーは人間をモデルとした例が多く見られるだろう。

永島千裕が描く絵画にも人魚姫や背中に翼が生えた天使らしき人間などが描かれている。それら現実離れしたキャラクターたちはイラストレーションやアニメーションを思わせる明るい色彩のもと、ファンタジックに描き出されたように見える。

だが、ポップな色彩や細密に描かれた人物像に促されて画面を見始めると、画面の細部に奇妙な毒や違和感が見出される。人物たちの虚ろな目、足の踝や関節、手の甲や身体が痩せて骨が浮き上がった身体、関節部分が赤く腫れていたりする描写は健康的で大らかな印象を受けるイラストやアニメとは異なる不健康的な弱々しさが伺える。どこか生を謳歌していそうなキャラクターたちの無垢な存在ではなく、影のある存在として描き出されているのだ。

本展のタイトル「alien」には地球外生命体としての意味もあるが、本来は外国人、異邦人を意味する言葉である。同じ人間でありながら、異なる世界に属する他者であること。永島が描く絵画には「alien」が持つ疎外や孤立・孤独感が漂っている。そう、「エイリアン」とは現代を生きる私たちが抱え込まざるを得ない世界への違和感なのかもしれない。alien ageを生きる人のための絵画がここにはある。

最終更新 2015年 10月 31日
 

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