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黙示録―デューラー/ルドン
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 9月 08日

アルブレヒト・デューラー 《四人の騎士》(『黙示録』より) 1497-1498年頃 木版 メルボルン国立ヴィクトリア美術館 © National Gallery of Victoria, Felton Bequest, 1956

《黙示録》――ヨハネがイエス・キリストから啓示されたという、新約聖書の最後を飾る預言書――は、現世の終末の様子が記された異例の教典であり、西洋美術においてたびたび視覚化されてきました。この黙示録図像は、いまから約500 年前に決定的なイメージを獲得しました。それは、ドイツ最大の画家・版画家、アルブレヒト・デューラー(1471-1528 年)による豪華な木版画集である《黙示録》連作(1497-98 年/1511 年)によってでした。

デューラーの《黙示録》が登場する時代、ヨーロッパでは印刷技術の向上によって、活版と木版挿絵を組み合わせた木版本が大量に出版されるようになりました。デューラーの《黙示録》は、書籍というメディアの先進性に着目し、当時の版画の概念をはるかに超える豪華な版画集を刊行したのです。この《黙示録》は、単なる書籍挿絵としてではなく、絵画に引けをとらない版画芸術としての輝きを放っていたのです。デューラーの壮大な《黙示録》のインパクトは大きいものでした。その影響は、同時代のみならず、時代が下った19 世紀においても見出されます。デューラーが制作した約400 年後、フランス人画家オディロン・ルドン(1840-1916 年)による《聖ヨハネ黙示録》(1899 年)には、デューラーからの影響の痕跡を見ることができるのです。

この展覧会は、デューラーの《黙示録》連作を中心に、西洋美術における黙示録図像の変遷を、中世末期から近代までたどるものです。

本展覧会は3部構成となっております。第1 部では、1500 年という節目の時代に生み出されたアルブレヒト・デューラー(Albrecht Dürer, 1471-1528 年)の《黙示録》連作(およびその書籍版)に焦点を当てます。その造形と図像表現の源泉をたどりながら、この大作が同時代に与えた影響に注目します。

第2 部では、ドイツの宗教改革の時代における黙示録図像に注目します。16 世紀ドイツの版画家マティアス・ゲールング(Mathias Gerung, 1500 頃-68/70 年)の《黙示録註解》を紹介し、同時代の宗教と図像表現との関係を考察します。

第3部では、近代の黙示録連作として最も重要な、オディロン・ルドン(Odilon Redon, 1840-1916 年)による黙示録連作に注目します。この作品は、デューラーという偉大な先例に触発されて生み出されましたが、様々な先行作例からの影響、そして同時代の文学との関連性を見ることができます。伝統と近代との間でルドンの連作がいかに生み出されたかを概観します。

なお、この展覧会は、同時期に国立西洋美術館で開催される「アルブレヒト・デューラー版画・素描展」の関連企画でもあります。この機会にぜひ、「黙示録」の幻想的な世界をご堪能ください。

※全文提供: 東京藝術大学大学美術館


会期: 2010年10月23日(土)-2010年12月5日(日)

最終更新 2010年 10月 23日
 

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