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平間貴大 展
Editor's Note
Written by Kae ISHII   
Published: August 20 2010
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ドレミファソラシは五線譜ではなく1234567と横並びの数字で表され、5040通りの七桁の数字が楽譜として壁に貼られている。会場では実際に演奏された曲も流れているが、一つの音の長さが等しく一秒であるため全ての曲を聴き終えるには9.8時間かかる。この展示タイトルは、演奏のもとになっている音列が17世紀の数学者マラン・メルセンヌが確立した音符の順列のみで作曲するという方法であること、数字による記譜法が18世紀の思想家ジャン=ジャック・ルソーの考案であることによる。そして本展は2000年に提唱された、偶然性や即興性を限りなく排除した方法音楽の主義を純粋に追求した試みであることから、「10年遅れた方法音楽」と題されている。しかし「10年遅れた」と称しながらも本展が開催されたということは、主義としては既に存在していた方法音楽が、作曲の段階においては未だに完成していなかったことを物語っている。展示/演奏されている曲は作者の恣意が無効な条件下で作られたため、必然的に七つの音が5040通り全パターンの順列で並ぶ膨大なものとなる。来場者は数字の記譜を前に抑揚のない音の並びを延々と耳にすることになるが、没個性的な空間に身を置くことに意外と違和感は無く、ワンドリンクを注文すればいつまでも居続けたい気持ちになる。

Last Updated on November 01 2015
 

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