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碓井ゆい:泣く前
編集部ノート
執筆: 平田 剛志   
公開日: 2010年 8月 06日

割れたものは未完成や不要なものとされる。時代が古ければ考古学的な資料として扱われるが、そのように扱われるものの方が稀だろう。それが絵付けされた陶器であればなおさらである。欠けた絵や模様は鑑賞されるものではなく、絵として成り立たないものとして見なされる。なぜなら、絵付けされた陶器は割れた状態で鑑賞することなどないからだ。

だが、碓井は絵付けをした陶器を割り、割れた欠片をつなぎ合わせて作品とする。そこに見られる欠損、断片、つぎはぎによって現れるイメージは、「修復」ではなくイメージの「再生」である。欠けたピースを補うように、かつてはあったが今は割れて(見え)ない部分を補うようにものを見る。繋ぎあわされたイメージは、絵にヒビがはいったままである。だが、傷ものや欠けたものほど、まなざしは惹きつけられる。

最終更新 2015年 10月 31日
 

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