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水田寛:ふるさと
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 8月 04日

画像提供:アートコートギャラリー
Copyright © Hiroshi Mizuta

何台もの車が連なる道路、洗濯物の揺れるベランダが規則的に並ぶマンション、同じ形のブロックが敷き詰められた歩道・・・。水田寛の絵画がモチーフとする、同じものが繰り返される単調な風景は、日常のいたるところで目にする共有された都市の風景であると同時に、新興住宅地で生まれ育った水田自身にとって慣れ親しんだ風景=「ふるさと」でもあります。

「似たような物が沢山ある」。私たちは、この事をどうということもない事実としてとらえ、日々特に考えることもありませんが、こうした車の流れや、連なった住宅をふと気にしてみると一抹の不思議さ、または不気味さを覚えます。

そう語る水田は、自らの視覚の原体験と独自の観察眼によって、平凡な都市の風景に潜む「歪み」や「余剰」をすくいとり、使う絵具の色を限定する、絵具を拭き取る、溶かすなど、物質としての絵具の効果を実験的に引き出しながら、色彩・具象性・抽象性・再現性・マチエールといった絵画的要素を意図的に拮抗させることで、背景とモチーフ、その輪郭線が、観る人の視線の動きに応じて反転し続けるような、不確かで流動的なイメージの集積としてキャンバスの上に炙り出します。

水田が自身の「ふるさと」について
「灰色と白と緑が均等に混じり合った風景には寂しさ故の趣があり、天気の良い日には青空がスコンと抜けて、私の住んでいた古ぼけた団地が一丁前に美しく見えたりもする。」とも話すように、私たちが「観る」ことによって、画面上の見慣れた風景の内側から立ち現われる異質なイメージの断片は、観る人それぞれの記憶に染み込んだ風景と交わり、希薄でありながらもどこか親密な、両義性をもった現代の「ふるさと」を浮かび上がらせるのかもしれません。

本展は、東京都現代美術館でのグループ展《MOT ANNUAL 2010 – 装飾》から約半年を経、来年3月には若手作家の登竜門である《VOCA》展(上野の森美術館)への出展を控えて制作に打ち込む水田の、より深度を増した表現と、その進化の現在形を個展という形で余すところなくお伝えする機会となります。 どうぞご期待下さい。

※全文提供: アートコートギャラリー


会期: 2010年9月23日(木)-2010年10月23日(土)

最終更新 2010年 9月 23日
 

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