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白岡順:梅雨と白雨
編集部ノート
執筆: 平田 剛志   
公開日: 2010年 6月 26日

「白雨」とは聞き慣れない言葉かもしれない。「白雨」とは「明るい空から降る雨。にわか雨」のことだという。梅雨と白雨。白岡順のモノクローム写真を形容するのに、これほど相応しい言葉もないだろう。

かつて文芸評論家・加藤典洋は白岡の写真についてこう述べたことがある。

「黒は水羊羹の黒。白は寒天の透明さ。それはひんやりしているけれどそれだけではなく、口に含むことができる。」(「白岡順 1991作品展「苳の花」」『白岡順』カロタイプ、2010年、p.20[初出『太陽』No.372、 1992年6月号])

窓からの眺め、水滴、黒と白のモノクロームの淡いから現れてくる女性のヌード。写真が現像によって像が現れてくるように、鑑賞の場においても濃密な空気感を漂わせて、像が現れてくる。水羊羹の舌触り、寒天の口どけ、梅雨の蒸し暑さ、白雨の唐突さ。五感(語感)を刺激してやまない白岡順の写真は梅雨時の湿気のように、私の身体に纏いつき離れない。だが、その感触は不快というより、心地よい。

最終更新 2015年 11月 03日
 

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