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松延総司:Direction of Materials
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 6月 18日

Direction of Materials (detail), 2010, paper, inkjet print, variable dimensions.
2010 © Soshi Matsunobe
Courtesy Super Window Project, Kyoto.

松延総司(日/1988)の作品は、顕著にミニマルなスタイルを徹底しながらも、詩的で親近感に満ちたコンセプチャルな視覚言語を作り出し、彫刻、ドローイング、インスタレーション等をリンクさせ、芸術的であると同時に、哲学的、形而上学的体験をさせます。

今回の松延総司による「Direction of Materials」展は、前回開催した、Morgane Tschiember(モーガン・チンバー)による形式主義的な作品「Folding Space」「Solid Geometry」との間に構造主義的な対話と共鳴を生み出します。作家は自身の手法を歴史的なポスト・モダンの方法論に対し、反響、影響、連合、又は反抗して行く為に展開し、建築学的規範や空間表現と知覚を探求するだけではなく、幾何学と立体幾何学の美的価値を結びつけ、抽象的な事柄や概念論、形態の間に力強い繋がりを作り出していきます。

「Direction of Materials」展は、その構成自体をを操作する事により、実験的に進行していきます。何も展示されていないかの様に構成された空間は、制作の過程、進行中の作業、又は進行を待つ作業とも言えます。収納棚に収まっている資材がそれを象徴し、総体としての作品が作業場、又はアトリエ的空間として進行していきます。様々な可能性を試し立証していく場が、特定の物体から様々な物語を導き出していきます。

手作業によるこれらの仕事は、デジタル印刷による紙を立体的に組み上げています。ひとつひとつの箱は一枚の紙から彫刻的に作られているにも関わらず、全体としては大きな固まりから切り出されただけの素材に見えます。視覚的に、又個体としてはオプ・アートや建築的な図式象徴主義を思わせ、システムとして機能する構造主義的比喩、又は語法としての記号を作り上げます。形式主義的な形の上に理論を織り込まずに描かれた線は、禅的な体験にも導かれ、作家のそぎ落とされた考えが表れています。印刷された線からは繊維や建築用の木材の木目、さらに広くは日本庭園における砂利の線を思わせます。しかし作家の持つ文化的継承は、より目に見えない、形に対する禁欲的な法則や、形式、素材に対する倹約的な姿勢、構成における習慣とバランス、展示を構成する素材それぞれの位置関係や配置、間(ま)における時間と空間に準じており、最終的には作家の意図、方向性、出張までもが取り除かれた印象を受けます。

”素材”としての作品は動かされるのをただ待つ。作家にとってこの行為は形式上の積極行動主義に対する実験であり、その静かで誠実な行為は理性的な考察を呼び起こす為に可能な限りの直接的な見せ方、そして審美的要素が取り除かれています。観念的な形状の定義、複数の要素の集合体としての形状を越え、芸術や精神的過程を経て作品が成立される事を作家は追求しています。しかし同時に今回展示/意図されている素材や概念的要素は、平行線上にありながらも違った方向性を持っており、その具象的構成は明瞭である必要性があり、同時に物体の形状を見出していく狙いもあります。

作家は創作の過程そのものが、芸術の本質と繋がりを持つ事に強い関心を持っています。私共のギャラリーを実験の場とし、アプロプリエーション(流用)の考察、展開、そして様々な現象に対する解釈を、操作、経験、知覚によって見出していきます。

1988年生まれ。京都在住。2010年1月よりSuper Window Projectに所属。
この度の「DIrection of Materials」は当ギャラリーでの初の個展になります。

※全文提供: Super Window Project


会期: 2010年6月11日-2010年8月8日

最終更新 2010年 6月 11日
 

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