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ロバート・ウォーターズ:MAN
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 6月 10日

《MaC (Artium, 2008)》|画像提供:ミヅマ・アクション|© Robert Waters

ロバート・ウォーターズは、1974年ロンドンで生まれ、98年York University(Toronto, Canada)を卒業しました。

彼が制作する作品は、今なお進化し続ける脱工業化社会の習作です。心と体、そして支配と自由という相対する領域を理解することにより、人間の生物学的なシステムをも超越したいと願う人間の本質を探究すると同時に、社会構造の変化にも重点を置くことで、変わりゆく環境への人間の帰化を検証しています。彼のプロジェクトは、インスタレーションと絵画のシリーズで構成され、男性の性行動、暴力、そして死を通して人間性と人体を追究しています。作品は、形而上と形而下の結び付きを際立たせるため、馴染みのある素材を用い、素材そのものが活かされる手法で制作されています。人間的、そして社会的なテーマを扱う中で、平等のための相違という存在を守るため、政治的主題を内包しています。あるいは、人体を政治活動の場と捉えることで、ウォーターズは、自己認識と社会統制への疑問を投げかけているのです。

ウォーターズの挑発的な男性の描写と独特な素材選びは、彼の作品を特徴づけ、そして彼の存在が世界的に知られるきっかけとなりました。例えば、彼が現在手掛けている絵画シリーズ「Clean Up Your Act You Dirty Faggots」は、紙に漂白剤とヨウ素を使用したゲイ・ポルノの肖像です。時間とともに、ヨウ素は完全に色褪せ、漂白剤が紙に浸食します。この作品は、HIVが発見される前の1970年代のゲイ・ポルノからイメージを得たもので、病と死に対する精神的な追悼であり、また、ゲイの人権や性そのものの不毛化などという複雑な対立構造を持っています。今回の展示では、ウォーターズの2005年と2007年の作品、そしてこの個展のために新たに制作された作品も紹介しており、時を経て浸食した作品をご覧いただけます。

彼のインスタレーションシリーズである「Man at Computer」は、既にヨーロッパ、北アメリカそしてメキシコで展示されており、我々が日常で目にする私的な情景を公の場で見せることにより、深まり続ける人間とテクノロジーの親密性を表現しています。これらの作品は、コンピューターの光によって照らされる夜中の性行為を記録したもので、性の探求とエロチシズムの疎外という相反する両方のイメージを暗示しています。この作品は、壁に直接貼り付けた梱包用テープに投影された映像を、部分的にカットして、その情景を描き出しています。

そして、新シリーズ「Killing San Sebastian」は、等身大の聖セバスチャンの絵を、会場で実際に弓矢を使用し、射抜くことにより完成させる作品です。この作品は、弓矢によって処刑されたキリスト教殉教者サン・セバスチャンの有名な絵画や彫刻を基にしています。この大きな絵は、格子状に吊るされた小さな絵と共に展示され、これらは聖セバスチャンから連想される宗教的エクスタシーと男性の体を表現しています。

長年に渡り、ロバート・ウォーターズの展覧会をキュレーションしてきたイギリス人シャイ・オハヨンによる展覧会 ”MAN”では、現代社会における矛盾する様々な男性像の形を見ることができます。性行動と暴力の間に存在する相いれない関係性を理解することを目的に掲げ、様々な媒体を通して独自のプロジェクトを今回展示いたします。

インスタレーション(Man at Computer, Target That Won’t Feel A Thing)
ビデオ(Learning to Care/Learning Not to Care)
パフォーマンス(Killing San Sebastian)
絵画(Clean Up Your Act You Dirty Faggots, Are You a Body or Do You Have a Body, Jungle Gym)

※全文提供: ミヅマ・アクション


会期: 2010年7月14日(水)-2010年8月14日(土)

最終更新 2010年 7月 14日
 

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