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カイガのカイキ
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 5月 26日

本田和博《日野風景》2004年|© Kazuhiro Honda

 絵画は、美の味わいをもたらすだけではなく、日常の中では出会うことのない、現実の別の姿をかいま見せてくれます。それはどこからやってくるのでしょうか。

画家は、かつて見た光景や体験したことの記憶、感じたことや思い描いたことなどを心の中に積み重ね、自身の世界観をつくり上げてきました。これらは、形と色彩によって画面に表され、そこから私たちは、画家の意識の内にある未知の光景に触れるのです。そして制作の過程では、世界観を創作に変えるための、技と心のたゆまぬ探求が行われます。そこに、絵画ひいては芸術の原点があるように思われてなりません。

今や絵画は、新たな技法や素材を取り入れて、実に多彩な様相を示しています。その一方で、外見の豊かさの中にその本質が埋もれつつあります。そうした中でこそ、いったん原点に立ち帰ることは大きな意味を持つといえるでしょう。

この展覧会では、上野慶一、内海聖史、岡田真宏、黒須信雄、平原辰夫、本田和博、安井敏也の作品を紹介いたします。7名は、空想した景色を描いたものや、色彩で自身の心を表したものなど、制作のテーマや手法は大きく異なりますが、思いを込めて「描く」先に自身の世界観を表現するという、絵画の原点にもとづいた活動を続けてきました。その中でつくられた作品は、絵画の真の力を体感させてくれます。それは、私たちの意識の奥底をふるわせ、一人一人の心の内にもある、「世界」に対する思いを確かめる手がかりになるでしょう。

出品作家
■ 本田和博
1959年生まれ。和紙などのやわらかな下地に、鉛筆などで線を一本ずつ彫り込むようにして、独特のデフォルメによる風景や人物を描いています。
■ 上野慶一
1956年生まれ。絵画の成り立ちを探り、視覚の上での巧妙な仕掛けと、自身が仕立てた空想の物語を組み合わせながら作品が展開します。
■ 安井敏也
1963年生まれ。仏教の思想などを制作のおおもとにして、執拗に塗り重ねるような油彩の細かな筆づかいで神話的な世界が描かれます。
■ 黒須信雄
1962年生まれ。無数の「ひだ」のような形が、画面全体に積み重なる作品によって、画面の中に果てのない空間と時間が表されます。
■ 平原辰夫
1952年生まれ。パネルや和紙にアクリル絵具をスポンジなどで塗り込めた作品は、錆びた金属や土の手触りなどを思い起こさせます。
■ 岡田真宏
1947年生まれ。大画面の和紙などに、さまざまな色彩の鉛筆で無数の線を重ねることで「光」が描かれ、自然や大宇宙の姿がそこに浮かび上がります。
■ 内海聖史
1977年生まれ。油彩による数センチのドットを、巨大な画面に無数に描いた作品などによって、色彩がつくる空間と人との関わりが表されます。

※全文提供: 足利市立美術館


会期: 2010年4月10日-2010年6月13日

最終更新 2010年 4月 10日
 

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