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古屋誠一:メモワール.
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 5月 19日

《ウィーン》1983年 画像提供:東京都写真美術館|Copyright © Seiichi FURUYA

古屋誠一は、1950 年静岡県に生まれ、1972 年に東京写真短期大学(現東京工芸大学)を卒業後、1973 年にシベリア経由でヨーロッパに向かい、1987 年以降はオーストリアのグラーツを拠点に精力的に作品制作を続けています。隣接する国々の国境地帯やベルリンの壁など、様々な「境界」を問う作品を発表する一方、オーストリアの写真批評誌『カメラ・オーストリア』では、創刊時から編集に参加し、日本の写真家をヨーロッパに紹介するなど、幅広い活動を展開しています。

1985 年に東ベルリンで自ら命を絶った妻クリスティーネを撮影した写真集『Mémoires(メモワール)』では、家族が抱える闇や悲しみ、社会における生と死の問題を露呈し、国際的に高い評価を得ました。主な著作に、1980 年に滞在したアムステルダムからなる写真集『AMS』、『Seiichi Furuya Mémoires 1995』などがあり、2002 年には『Last Trip to Venice』により第27 回伊奈信男賞、2007 年には『Mémoires 1983』により第19 回写真の会賞を受賞のほか、国内外の展覧会に多数参加しています。近年は、妻クリスティーネの手記を掲載した写真集も制作し、現代社会における家族のあり方を問う写真家としても注目を集めています。

本展は、1989 年より20 年あまり発表し続けている「メモワール」の主題の集大成となる展覧会です。「彼女の死後、無秩序な記憶と記録が交差するさまざまな時間と空間を行きつ戻りつしながら探し求めていたはずの何かが、今見つかったからというのではなく、おぼろげながらも所詮なにも見つかりはしないのだという答えが見つかったのではないか」(2010年1月インタビューより)という古屋の思いは、ピリオドを打った展覧会タイトル「メモワール.」にも表れています。

事実と正面から向き合い、もう一人の自己を相手に、時間と空間を超えて生き続ける記憶を、蘇生させ編み直してきた古屋の制作活動。「写真とは心の奥深くに籠る“どうしようもない何か”と向き合い、さらにそれを表現の場へと引き上げることを可能にしてくれる素晴らしいメディアである」という古屋の表現の世界を、東京都写真美術館収蔵作品「Mémoires(メモワール)」シリーズを中心に124 点で展覧します。また、古屋作品の真髄でもある写真集の編集過程を 公開、古屋自らが編集・製本した未発表の自家版写真集も出品いたします。

※全文提供: 東京都写真美術館


会期: 2010年5月15日-2010年7月19日

最終更新 2010年 5月 15日
 

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