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本堀雄二:紙の断層 透過する仏
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 5月 17日

《BUTSU》2008年 h168×68×58cm 台h58×80×80cm 使用済みダンボール
画像提供:INAXギャラリー2|Copyright © Yuji HONBORI

仏像をモチーフにした立体作品です。といっても、木や石、金属やFRP の彫刻ではありません。素材はダンボール。それも、スーパーやホームセンターで私たちが日常的に目にするダンボールを、そのままカットして使用しています。そのためダンボールに描かれたミカンの橙色や野菜の緑色が随所に点在し、まるで剥げ落ちた仏像の古色にも似通った風合いとなっています。

観音像や薬師如来、仁王像の輪郭をなぞって輪切りにしたダンボールが、幾層にも繋ぎ合わされ、仏像のかたちが出現します。軽さ、ハニカム構造のユニークさ、隙間の表情を強調するために縦に重ねられ、その隙間も大きく取っているために、真正面から見ると透けて何も見えなくなる錯覚に襲われます。横に回って見るに従い徐々に全体のボリュームが見えてきて、また違う造形が現れてきます。

本堀雄二は神戸在住の50 代の作家です。大学卒業後から木や紙、新聞、牛乳パックなど身近な素材を用いて制作を続けてきました。古木を割ってつくる厨子の中に、なにか安置する命のようなもの、仏像のようなものをつくろうと思いついた時、よりユニークで、具象的ではない表現のできる素材を探して、行き着いたのがダンボールでした。

神戸ビエンナーレ(2009)出品作品では、展示会場であるコンテナ内に、さんさんと注ぐ陽を背に全てが透過し、後光に溶けるような光景が現れました。身近な素材を用いることで、逆に仏像というかたちの向こうに人が求める精神性が、象徴的に浮かび上がるようにも感じられます。

透ける仏像の中にはさらに小さな仏や輪などが入っていて、魂を入れることの代わりとされています。今展では高さ2mの大きな薬師如来坐像を中心に、観音像、阿吽像などがギャラリー空間に浮かびます。ぜひ会場でご覧ください。

本堀雄二
1958 神戸市生まれ
1983 愛知県芸術大学彫刻専攻大学院修了

個展
1987 シティーギャラリー
1988 天野画廊
1989 天野画廊
1992 天野画廊
1993 Gallery NAITO
2002 トアロード画廊
2006 Gallery 北野坂
2008 ギャラリー白
2009 ギャラリー白

グループ展
1988 現代木刻フェスティバル
1989 京都美術展、天展、現代日本美術展、大阪現代アートフェア‘89
1990 兵庫の美術家、現代木刻フェスティバル
1991 天理ビエンナーレ‘91
1992 兵庫の美術家、点線面1992ギャラリーNAITO
2009 LEXHIBITION L ギャラリーF-1 名古屋、神戸ビエンナーレ2009

※全文提供: INAXギャラリー2


会期: 2010年6月1日-2010年6月28日

最終更新 2010年 6月 01日
 

編集部ノート    執筆:田中みずき


運慶の阿吽像といえば、迫力と重みを感じさせる像だ。しかし、本展覧会では、非常に軽いその姿を観ることができる。段ボールを重ねて出来た仏像たちは、どれも実際にある像を模したものだ。キッチュで、大きいながらも浮遊感を孕む。何か影を観ているような気分になりつつ、実物を眺める以上にいつか観た実物の姿を脳裏で探求させてくれる面白さを現場で堪能して欲しい。


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