式3 |
アートワーク |
執筆: 小金沢 智 |
公開日: 2008年 11月 29日 |
水で満たされた1メートル四方のアクリルケースに五葉松が浮かぶ。床に直接置かれたケースはわたしたちの視点を下げ、松を頭上から見下ろさせることとなった。凍りつく気泡はすでに前作で見たとおりだが、今回鑑賞者は今まさに植物がその生命活動を行っているさまをありありと見たに違いない。松を入れたケースに水を満たしていく過程を撮影したムービーからも明らかなように、そこに描き出されていたのは土から引き抜かれた松が水の中で新たな生命を与えられる再生の物語だった。 冷凍庫を使った《式2》からの連続性および類似性が顕著だが、ケースの上下四隅から糸で留められることで中央にその形を留めているという点で、鉄枠の中にワイヤーで松を縛った《式》(2005年)とも共通点を持つ。いわばそれまでの二作を折衷した作品と見ることもできるが、後の《式4》(2008年9月)を含めて「式」シリーズの全体を見渡したとき、今回が最も松に対して寛容な作品になっているということがわかるだろう。松は空気に晒されるでもなく、氷に閉じ込められるでもなく、真空パックされるでもない。縛りがあるといってもそれは植物にとって欠かすことのできない水であり、それがマイナスだけを意味していないという点で他の三作と一線を画しているのである。 作品詳細アーティスト: 東信 |
最終更新 2015年 11月 01日 |