力強竹男(萩原朔太郎君へ) |
アートワーク |
執筆: 小金沢 智 |
公開日: 2008年 11月 24日 |
萩原朔太郎「竹」(『月に吠える』所収、1917年)への返答として、東がギャラリーに作り出したのは1本の竹と写真パネル25枚からなる竹林。「地面」や「地下」、「根」など、朔太郎がその作中で竹の生える〈地〉に目を向けたのとは対照的に、東はそれらを天井からワイヤーで吊るすことで、鋭く伸びる竹に、不思議な浮遊感を与えることに成功した。しかし、ここでわたしたちの視線は複雑に絡まり合う根を起点にして、逆説的に〈地〉へと注がれることになる。つまりこのとき東が表現上の核としたものは、固く伸びたその幹ではなく、普段地中に隠されているその根にほかならかった。東は朔太郎が哀愁を感じたその場所に、まさに生命の力強さを見いだしたのである。 なお東は、「フラワーアーティスト東信が見る(1) 琳派」(『Casa BRURUS』NO.104 November 2008、マガジンハウス)で、尾形光琳《竹梅図屏風》(18世紀、東京国立博物館所蔵)にインスパイアされた作品を発表している(写真撮影:椎木俊介)。屏風を模して金地を背景にし、数本の竹を一まとめに水平に配したその作品は、きわめてシンプルでありながら竹と琳派の本質を見事にとらえたものだった。 作品詳細アーティスト: 東信 |
最終更新 2015年 11月 01日 |