Meat and Flower |
アートワーク |
執筆: 小金沢 智 |
公開日: 2008年 11月 12日 |
縦長のアクリルケース。その天上から鉤鼻で、一片の肉塊が吊るされている。宙吊りにされ、赤黒く変色していく牛肉にピンで留められているのは、赤が艶やかなパフィオペデュラム。その様は昆虫の標本、特に蝶のそれを思わせ、まさにわたしたちの眼を釘づけにする。肉は切り分けられることで、花は茎から切り離されることで、生命として死んでいく。だが見逃してはならないのは、この肉片からうっすらと血が滲み、ゆるやかな間隔でケースの底に滴っていたことだろう。それは東の予期しない、偶然の産物だったに違いないが、零れ落ちる血はその回数を重ねることで、花冠のような形を生成していく。肉と花。同じ生物でありながらそのあり方はまったく異なるが、わたしには死んだ花が、同じく死んだ肉によって、姿を変えて生き返ったように思われた。 ただし、そのような甘美な生まれ変わりに思いを馳せてばかりはいられない。花と別の存在を並列する作品としては《Fish&Flower》(2007年8月)が挙げられるが、生きている魚を展示したそれと、死んだ牛(の肉)を用いた《Meat and Flower》の印象はまるで逆のものになった。腐敗していく肉の臭いは花/植物の比ではなく、二・三日おきに展示替えが行われたという。 作品詳細アーティスト: 東信 |
最終更新 2015年 11月 01日 |