式4 |
アートワーク |
執筆: 小金沢 智 |
公開日: 2008年 11月 12日 |
東の作品をよく見ている者であればあるほど、鉄枠、冷凍庫、水槽と続いた「式」のシリーズが、よもや真空パックに転じるとは思わなかったに違いない。それは二つの点でこれまでの作品と明らかに異なっている。一つは、あまりに平面的であるという点である。東はこれまでの展示において、花/植物という〈立体〉を空間内でいかに再構成させるか、ということに注意を払ってきた。「式」は松を四角形という規則の中にはめ込むシリーズであり、そこで言う四角形とは基本的に立体としてのそれだった。だから今回のように側面がほとんど認められない作りは、きわめて異例なものとしてとらえることができる。もう一つは、松への負荷という点である。真空パックに閉じ込められた松は、それまでの作品の比ではないほど生命として大きな負荷をかけられていた。全体の青みは日々失われ、刻一刻と死に近づいていった。作品として用いた後に土に戻されるとしても、回復の遅延は免れないだろう。 しかし、真空パックされることでその姿態の美しさは強調され、平面的であることで作品はよりヴィヴィッドに視覚に入ってくることになった。それはこれまでの「式」とは違う、まったく新しい「式」の誕生だった。東の花/植物をめぐる思考は、ここで大きく跳躍したと言える。 作品詳細アーティスト: 東信 |
最終更新 2015年 11月 01日 |