BOMBING OF A DAHLIA |
アートワーク |
執筆: 小金沢 智 |
公開日: 2008年 11月 12日 |
ギャラリーに入ると、いささか臭う。花/植物の腐敗によるものではない。そして歩を進めると、足下には何かが黒々と散乱している。臭いは爆竹によるものであり、散乱していたものはそれによって爆破され飛び散ったダリアだった。 黒蝶ダリア。深い赤をその身にまとい、ウエディングでも高い人気を誇るその花は、そのままで十分すぎる美しさをそなえている。東が今回作品に用いたのは、すでに仕事で使い、あとは捨てるだけとなったそれだった。東曰く「枯れる寸前の一瞬だけ、とても魅力的に溢れる瞬間がある」というダリアを、その瞬間に狙いを定め、爆破という人工的な行為によって新しい〈美〉へと昇華する。その一瞬が訪れたのが会期10日目にあたる2008年7月27日の午前であり、わたしが足を運んだのはその昼過ぎだったのである。だからわたしは、爆破される前のそれも爆破の様子も見ていない(後者については、そもそも東を含めた数人の関係者しか見ていない)。わたしはすでに爆破され四方八方にその残骸を飛び散らせている〈何か〉を見、そして、かすかな火薬の香りを嗅いだにすぎない。だが、そうした知覚が触発する想像力がある。踏みつけても構わないという残骸の中を歩き回りながら、爆破される瞬間のダリアに思いを馳せた。 作品詳細アーティスト: 東信 |
最終更新 2015年 11月 01日 |