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田村博文:STONE
編集部ノート
執筆: 平田 剛志   
公開日: 2010年 1月 15日

画像提供:COMBINE copy right(c) Hirofumi TAMURA

ギャラリーに展示された大量の石コロたち。掌に乗る小さなものから、岩のような大きな石までさまざまなサイズの「石」が展示されている。だが、「石」と見えたそれらは木肌から樹で作られたことが分かる。そう、展示されている「石」は木材を削って創られた「石」なのである。 そんな「石」が石庭のように並べられた様を眺め、「石」のひとつに触れてみる。すると「石」とは思えない軽さと温かみが感じられる。冬の寒さで冷えた手が暖まるような体温を「石」が持っていること。それは物質が持つ温度なのか、田村が書くところの「樹の精霊」なのか。 ところで、樹を素材に何の変哲もない石ころを創り続ける田村の作品から、橋本平八(1897-1935)による『石に就いて(付 原石)』*1を私は想起した。橋本の作品は実際の石をモデルとして制作され、田村は実物の石を見ずに制作をするというから、両者の制作方法は異なる。だが、「石」の存在感や「石」を樹で制作する姿勢には共通点が感じられなくもない。 人はなぜ、樹で「石」を創るのか。石の引力に考えを引き寄せられる作品である。

注:本展の展示作品は手で触れることができる。
*1: 1928(昭和3)年、木、H28.6cm、三重県立美術館寄託

最終更新 2015年 11月 03日
 

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