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田村久美子:OUT OF THE MOUNTAIN
編集部ノート
執筆: 平田 剛志   
公開日: 2009年 12月 03日

絵に厚みがある。描かれた油絵の量塊のことではない。キャンヴァスのことである。本展で展示されている田村の絵画は7~10cmの厚みある正方形のキャンヴァスに、都市や自然の光景が地平線を2分割した画面構成によって描かれているのである。 それらを、屏風絵を見るように身体の向きを左右に変えて見てみる。すると、風景がキャンヴァスの側面まで描かれているため、立体的に風景が立ち現れるのである。平面でありながら、立体としても存在する田村の「絵画」は、かつての屏風絵のように空間に奥行きを与える絵画空間を存在させることに成功している。 しかし、平面といえども「立体」であり「物質」であることに変わりはない。田村は支持体を厚みある正方形のキャンヴァスにしたことで、屏風絵とは異なり、視覚的に一望できる立体的絵画を創造したのだ。と同時に、地平線上に広がる風景の一部を切り取ったような光景は切断と連続性が与えられ、地平線はキャンヴァスを越えて広がりだす。 このように絵画と身体の関係性によって成立する展示のため、写真ではわかりづらい。実際の作品を厚みある空間で体感してほしい。

最終更新 2015年 11月 04日
 

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