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会田誠:絵バカ
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 3月 27日

会田誠 展 「絵バカ」|画像提供:ミヅマアートギャラリー

2010年5月6日よりミヅマアートギャラリーにて、会田誠展「絵バカ」を開催いたします。今回は会田本人の言葉をかぎ括弧<>に入れてご案内いたします。


昨年秋に市ヶ谷へ移転し<せっかく広くなったミヅマアートギャラリーのスペースが早くもぎゅうぎゅう詰め>になる、<大作がドーン!バーン!と来る><せこい小品なんてないぜ!>そんな<直球勝負の展覧会>です。

会田は本展出品作の「灰色の山」(3×7m)を昨年夏より約半年間北京に滞在し制作してきました。

猛暑の夏から極寒の冬、そして春へと移り変わる季節の中で、来る日も来る日も、OA機器と絡み合い山積みになったサラリーマンの死体を描き続けています。

これは会田の<人生史上最多の描写量>であり、<これを超えることは今後ないかもしれない>という力作です。女性の裸体だけを描いた「ジューサーミキサー(2001)」と対になる<兄妹作>、また<「ザク(戦争画RETURNS 番外編)(2005)」で消化不良だった藤田嗣治「アッツ島玉砕」オマージュの、リベンジ版>という側面もあるそうです。<深読み歓迎の超シリアス作>であり、そういう意味では会田の代表作「紐育空爆之図(1996)」などの系譜と言えるでしょう。

また、2007年に上野の森美術館にて開催された「アートで候。会田誠 山口晃展」で発表された「万札地肥瘠相見図」(4.5×10m)が、全面的に手が加わり、新しく生まれ変わった姿で再び皆様の前にお目見えします。

絵画の装飾的側面をクローズアップさせた本作は、その桁外れのサイズ故、一壁には収まりきらない<桃山障壁画的展示>になる予定です。<意味なんてこれっぽっちもない。あるのはただ網膜への刺激、視神経への純粋な奉仕。それこそ日本の伝統的絵画の真髄だ>と会田は語ります。

展覧会名『絵バカ』はお察しの通り、平井堅のアルバム「歌バカ」のパクリであり、本人曰く<ここからしてバカ>だそうです。また会田はこのタイトルに<日本の美術大学、しかも油絵科出身という“負の出自”を自ら背負い込む覚悟>を込めています。それを具体的に示した出品作が、新作油彩画と、新作ビデオになります。

会田作品には油彩画は非常に珍しく、本人が<四半世紀以上封印していた描き方を、あえて解禁してみた冒険作>とのこと。<腐っても油絵科出身者の意地を賭け、これぞ油絵!というものを描いてみせる>と意気込んでいます。

また「日本に潜伏中のビン・ラディンと名乗る男からのビデオ(2005)」でおバカビデオには定評のある会田が、またしても“笑撃作”に挑みます。内容は秘密だそうですが、<近代以降の日本の美術を形作ったと言っても過言ではない、日本の美術大学そのものが題材になる>とのこと。

本人曰く<展覧会名通り本当に僕が絵を描く行為にぞっこんなのか、それとも僕が描いたものがバカ絵なのか、それとも単に僕が絵をバカにしているのか・・・その辺も含めて楽しんでいただける絵画展になるでしょう>。

※全文提供: ミヅマアートギャラリー

最終更新 2010年 5月 06日
 

編集部ノート    執筆:田中みずき


絵画と映像の新作展。知名度の高い作家の個展であり、現代美術に関心が高い方にお勧め。

作品は、出身大学「芸大」に昔から伝わる裸体での宴会芸を女性が行う映像や、肩の力を抜いて落書きのように描いたもの、男性の死体が山積みになる状景を遠方から描いた巨大な作品や、やはり壁一面を覆う一万円札のコピーの上に体液のようなものが飛び散る絵画などが並ぶ。作風は一見、悪い冗談のように見えるかも知れないが、作家自身の過去作や、赤瀬川源平等の現代美術の歴史を意識させる内容になっている。

作品を観るには、美術の歴史を熟知した上で新しい表現を生み、「子供のような絵を描いている」とも評されたピカソに重ねて、21世紀版和製ピカソというように捉えると良いのかもしれない。作家自身が現代美術の制度を批判しつつも、逆接的にその文脈に頼り、美術史に詳しい鑑賞者にしか理解できないというハードルを隠している点も重なるか。東京日比谷のギャラリー・高橋コレクション日比谷で開催中(8月8日まで)の「会田誠+天明屋尚+山口晃」展に並ぶ同作家の過去作と比較しても面白い。


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