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片山雅史:螺旋/風景
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 3月 25日

新作参考画像(部分) 画像提供:ギャラリーノマル copy right(c) Masashi KAYAYAMA

2007年、当画廊の広い展示スペース全体を、観る者の視界いっぱいに広がる1,000点組の大作で埋め尽した大規模な個展より、はや3年。片山雅史の新たな展開をご覧いただける展覧会を、4月3日(土)より開催いたします。 「自己の根源的な表現衝動」を風のイメージに託し、力強く奔放に描いたブラッシュ・ストロークと、そのイメージに相反するような幾何学的秩序での構成、さらに顔料のもつ物質性とイメージとの拮抗などによって生じる緊張感と知的な感覚が伴った作品シリーズが注目され、国内の大規模な展覧会や海外での発表機会を得た80年代中頃から90年代。自身の表現を見つめ直し、新たなテーマを模索した90年代後半。そして1999年に京都から福岡に拠点を移した片山は「見ることとはなにか」という根源的な問いかけをテーマに、花畑や向日葵の花心などの画像を顔料で再現したイメージと、「知覚」を喚起させる媒介としての半透明の厚い膜層によってなる作品、「皮膜」シリーズを集中的に制作してきました。 前回の当画廊での個展は、その「皮膜」シリーズの集大成として、福岡市美術館などでの発表に続くかたちでの開催となりましたが、同時期から今回の新作展につながる新たな試みが開始されていました。「皮膜」では、作品の有する色彩や物質性が描かれたイメージと結びつき、様々な知覚や記憶を導き出す“装置”のような役割をはたしていました。しかし、今展で発表される作品では、筆(墨)を用い、和紙などの薄く柔らかな支持体に、自然界の生成規則を手掛りに導き出された“線”が、幾重にも交差し無数に増殖する様が描かれています。 シンプルでありながら深く観るものを引き付ける、連作の平面作品の出品をはじめ、内と外とを結ぶ画廊外壁へのウォールドローイングも計画。イメージの再現としての絵画ではなく、線で描き出された集積の中から、新たなイメージの獲得を試みます。画廊という限られた空間での展示でありながら、視覚を通して導き出される無限の広がり・つながりを体感していただけるでしょう。 「皮膜」シリーズでの展開に引き続き、「見ること」「描くこと」に対する深い洞察、そして表現を越えたところにある、永遠なるものへの純粋な興味を深く探究する姿勢がより鮮明に映しだされるであろう、片山雅史の意欲的な新作展。ぜひともご高覧、ご取材賜わりますようよろしくお願いいたします。

作家コメント
目の前に拡がる自然の光景、網膜に映る様々な形
何を見ているのか、何を見ようとしているのか?
けっして細部ではなく、そして全体でもない
どこかを見ているが、どこも見ていない

光と闇の狭間、
時間の経過に隠された生命のリズム 
自然のなかの無限の造形
増殖し続けるそのありよう

数年前より墨やインク、鉛筆といった素材で線画を描いています。
秩序と渾沌を併せ持つ線の集積で景色画を描いています。
たくさんの線と無数の螺旋の重なりが新たなイメージを紡ぐ。
見ることを超えた知覚体験に関心を持って描いています。
-片山雅史

※全文提供: ギャラリーノマル

最終更新 2010年 4月 03日
 

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