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前田圭介:the patchery
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 1月 17日

画像提供:ヒロミヨシイ copy right(c) Keisuke MAEDA

明暗と色彩の精緻なコントラストによって浮かび上がる、誰の心のうちにもあって、誰のものでもない世界。尽きることのない描写への献身を通して、前田圭介の絵画は、記憶の中の満ち足りた時間を呼び覚まし、世界に対する純粋な眼差しを回復する。 日常のありふれた光景が、精微細密に描き出されることにより、人の心を強く捉えるということ。この絵画における最も単純で、最も本源的な力が、前田の絵画には端的に表れている。そのイノセントでノスタルジックな表現世界が、私的な感傷を振りはらう硬質な美しさをもつのは、絵筆を身体の延長とするかのような、前田の描写に対する圧倒的な心身の傾注によるものだろう。「身を削り落とし、その肉を絞り、滴る血液で描いてやろう」と述べる前田の絵画には、失われた絵画の本源性を手探りで掻き集めるようなイノセンティズムの彼岸があり、それは写実性やリアリズムの範疇に収まらない、絵画への全的没入の可能性を示している。 「the patchery」と題された本展では、ある一冊の書物と、それを読む女性の姿がモティーフとして展開されている。追想と未来への希求が幾重にも塗り重ねられた前田の表現世界に、是非ご期待下さい。 前田圭介
1972年、名古屋生まれ。主な個展にヒロミヨシイ「in the sun」(東京)、ギャラリー・クリスティーナ・ウィルソン「when」(デンマーク)、ギャラリー・ダイアナ・スティグター「無題」(アムステルダム)など。主なグループ展に、ヒロミヨシイ「Gallery Artist Recent Works」(東京)、ギャラリー・クリスティーナ・ウィルソン「5 year anniversary show」(デンマーク)など多数。 ※全文提供: ヒロミヨシイ

最終更新 2010年 1月 16日
 

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