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CORNER
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2009年 12月 21日

横山裕一 作 画像提供:ナンヅカアンダーグラウンド copy right(c) Yuichi YOKOYAMA

このたび、NANZUKA UNDERGROUNDは、アレクサンダー・ゲルマン、ポール・デイビス、トースト・ガール、横山裕一によるグループ展、「CORNER」を開催致します。本展は、いかなる流行にも流されず、あるいは表現のジャンルやルールといったものに捉らわれず、「我流」を貫き続けている希有な表現者たちに注目し、あるいは時代を動かす芸術の力とは、彼らのような孤高の存在によるものなのではないかと、その言葉に耳を傾けようというものです。昨今、世界中で私たちの社会の在り方について変革の必要性が叫ばれる中、芸術や文化の有り様についても、より柔軟な変化が求められているように思えます。「corner」とは、行きすぎたアートの市場主義を、自問する意味で題しました。あるいは、アートという概念そのものが「曲がり角」に立たされているのではないかと。 アレクサンダー・ゲルマンは、ニューヨーク及び東京を拠点に活動するメディアアーティストです。世界各地で広く発表されている作品は、スミソニアン博物館、ニューヨーク近代美術館、フランス国立図書館などのパーマネントコレクションにも加えられています。様々なメディアを自在に駆使し、アート、科学、政治、大衆文化の境界線に挑みつづけるその姿勢は、ニューヨーク現代美術館によって、「世界で最も影響力のあるアーティスト」とも評されています。最近日本で出版された著書『ポスト・グローバル』では、日本に古くから伝わる唯一無二の職人技と美意識を研究し、「世界じゅうで使い捨ての文化が横行するなか、私は、何世代にもわたって受け継がれてきた智慧と精巧さと一流の技をもつ職人たちの仕事に携わる機会を得たことを尊く思い、さらなる創造を刺激された」と語り、グローバル社会における文化の新しい可能性について言及しています。 ポール・デイビスは、母国イギリスにおいて80年代後半より活動を始め、その計算された不器用さを得意としたドローイングを武器に、国内でも坂本龍一のオフィシャルホームページに作品を提供しつづけるなど、国内外で幅広く活躍しているイラストレーターです。社会風刺を得意とし、ウィットとアイロニーを交えたドローイングで、特に90年代後半には、「VOGUE」や「DAZED」など一流ファッションメディアにおいて人気を博しました。しかしその一方で、イラストレーターとしての知名度に反比例するかのように、ファインアートの世界での評価は上がらず、同様のスタイルで人気を博している6歳年下のスコットランド人アーティスト、David Shrigleyの後塵を拝しています。あるいは、作品の先駆性やオリジナリティーの評価に対するマーケットプロモーションの優位性といった問題を考えないわけにはいきません。 トースト・ガールは、メルボルン工科大学美術科MFAを卒業。在学中の1998年より「頭にトースターを載せてパンを焼く」というパフォーマンスを行っているアーティストです。一概にパフォーマンスアートといった括りでは捉える事のできないその個性は、歌手活動やダンス、即興舞台など、およそ既存のアーティスト像には収まりきらない多彩さを兼ね備えています。トースト・ガールの表現が、アンダーグラウンドを脱していないにも関わらず自己満足だけでも終わらない理由は、例えファインアートにその居場所がなくとも己の信じる表現行為を貫き、増幅させ、少なからぬ人々を巻き込んできたその結果にこそあるでしょう。ともすれば、時空を超えてその表現を見つめ直した時に、トースト・ガールのパフォーマンスが、私たちの生きるこの時代が内包する重要な側面を映し出している可能性は十分にあるのかもしれません。 横山裕一は、1990年に武蔵野美術大学油科を卒業、95年より漫画家として活動しているアーティストです。漫画のみならずそのカラフルなペインティングやドローイングを愛するファンは数多く、「六本木クロッシング」(2007年 森美術館)や「「City_net Asia」(ソウル市立美術館)への出展など、アートシーンからも高い評価を受けている孤高のアーティストです。そのシンプルにして味わい深い独特の線を基調とした唯一無二の作品は、アートのフォーマト化、ファッション化といった潜在的な問題に、あたかも警笛を鳴らしているかの如く輝いています。既存のコミック界とアートシーンのどちらにも収まりきらないその才能は、あるいはコミックの可能性を広げ、更にアートの未来をも開拓する可能性があるものと期待されます。 ここに見る4人のアーティストたちは、既存のアートシーンにおいてはアウトサイダーとされる表現者たちかもしれません。しかし、既得権益化した表現や体質は、必ず新しい何ものかに取って変わられる日が来ます。私たちは、常にその可能性について考慮し、流行に流されることなく見落とされがちな才能にも目を配る必要があるのではないでしょうか。 Opening Reception : 9th Jan 2010, 6-8pm ※全文提供: ナンヅカアンダーグラウンド

最終更新 2010年 1月 09日
 

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