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藤岡亜弥:私は眠らない
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2009年 11月 27日

画像提供:AKAAKA copy right(c) Aya FUJIOKA

 

この作品は作者の故郷が主な舞台となっている。
日々の中でその暮らしに刻まれるかすかな裂け目、ほんの少しの翳りを探りながら、記憶を揺動させていく物語である。
よく知っているはずの風景や家族と何度も出会い直す日常の旅。
家を取り巻く風景はかけがえのない人生へと重なる。

藤岡亜弥の眼の強靭さは、故郷の家族という最も近い血と地を撮ったこのシリーズにおいて、絶対的な距離と柔らかな触手というかたちで現れます。幾重にも渦巻く存在の不思議、日常が未知へとつづくきざはし。この写真によって初めて眼前にする生と死の営みに打たれながら、「私は眠らない」という一筋の響きを、つよく遠い希いのように聞くことができます。

今年の終わり、そして来年へのさきぶれに、このシリーズを発表できることを幸運に思います。

■藤岡亜弥×坂川栄治(ブックデザイナー)トークイベント 12月19日(土)17:00-19:00(入場料:500円)
■本展の開催と合わせまして、写真集『私は眠らない』(B4変型・96頁・上製・定価5250円)を発刊致します。
■オープニングレセプション 12月5日(土)18:00-20:00

※全文提供: AKAAKA

 

最終更新 2009年 12月 05日
 

編集部ノート    執筆:小金沢智


赤々舎から出版された藤岡亜弥の写真集『私は眠らない』(二〇〇九年)の刊行記念展として位置づけられる本展はしかし、写真集のイメージをよりどころに訪れると虚を突かれるかもしれない。ハートの形をした真っ赤なクッションが展示室手前の椅子に並べて置いてあり、展示室には祭壇らしき設えが作られているかと思えば、蝋燭すら灯り、隅には白いカーテンが吊るされている。神聖さと幾分かの俗っぽさが感じられる会場は、ただプレーンな印象の写真集とは趣を異にするのである。だがそれは、被写体である故郷と、故郷の家族への想いが実空間を手に入れてあふれているからなのかもしれない。 写真は額が皆異なり、展示されている総計六十点ほどの写真のうち約半分は、正方形、長方形、八角形、円形などバラエティに富む額に収められた小品である。クラシックな雰囲気の木製の額は、写真に漂う清涼とした空気感と混ざり合い、私たちをいつかの見知らぬどこかへと連れていくだろう。


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