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池谷保:基本の復習と予習
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 11月 27日

画像提供:児玉画廊

池谷はグループショーのシリーズ "Ignore Your Perspective" やアートフェアなどで断片的に紹介してきた後、昨年11月に初の本格的な 個展「入れかわる」(児玉画廊|東京)において本格的にデビューし、油彩による、立体的なマチェールに対する独特のアプローチとその世界観によって、2009年VOCA展(上野の森彫刻美術館)への出展、トヨタアートコレクションへの収蔵など、精力的な活動を続け、注目を得ています。

池谷のペインティングにおける、まるで渦巻きやカーテンのドレープのような動きのあるイメージ、多彩な色彩が渾然一体となる画面構成、油絵具を重厚な色彩の塊として、あるいは無数の粒状の突起や畝のような立体的な線描としてキャンバス上に塗り込めていく、その力強い表現は見る者を惹き付けて止みません。 池谷にとって「基本」であり「復習」となる以前から繰り返し試みてきた油絵具の造形的な描画法、つまり、これまでは前述の手法毎に別個のシリーズ的な展開をしてきたのに対し、まさに「予習」と言えるのが今回発表される新作に見られるより複合的な表現あるいは新たに試みる手法ということになるのでしょう。立体的な曲線がうねるような表現と、色の塊を重ね合わせて色彩を構成して行く手法とが合わさったような作品や、画面全面に上から垂らされた油絵具の層が、どろどろと溶岩がゆっくりと重なりながら固まっていったような粘っこい流動性を感じさせる重厚な作品、絵具の固まりを重力に逆らうようにキャンバスに貼付けた半立体的な平面作品の連作など、オイル・オン・キャンバスとは言いながらも、その姿勢はもはや平面のそれを凌駕しつつあると言えるかも知れません。 より強烈にかつ多様性を増した色彩と構成、密度と質量を伴った油絵具の層が作り出す有機的な質感による、こちらへと突き刺さるような存在感は圧倒的です。

※全文提供: 児玉画廊

最終更新 2009年 11月 28日
 

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