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梅沢和木:エターナルフォース画像コア
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 11月 17日

画像提供:frantic gallery copy right(c) Kazuki UMEZAWA

 

梅沢和木の描くイメージは、そのほぼすべてが、日常的にネットを徘徊することによって「収集」されたサブカルチャーの画像によって構成されている。私は以前、その収集作業の現場に立ち会ったことがある。無表情にモニターを見つめながら、高速で画像を選別し、黙々とマウスを操作しつづける姿は、いっさいの作家的な想像力を介さない「労働」と呼ぶにふさわしい。しかしそれ以上に、迷いのない彼の手つきは、その背後に存在しているであろう美意識の確かさを証明しているようであった。

梅沢は饒舌な作家である。彼はいつでも、自分の作品についてよく語る。

梅沢は自身の作品が「絵画」であることを誰よりも自覚している。しかし、彼の口から発せられるのは、従来の意味での美術的な言語ではない。その言葉はことごとく、「東方」や「ドラクエ」、「FF」、「らき☆すた」、「よつばと!」といった、サブカルチャーの固有名によって埋め尽くされているのだ。それは決して、サブカルチャーと絵画を類比させて語るといった、ありきたりな次元の話ではない。彼はストイックなまでに、自身の愛するゲームやアニメ、マンガの解釈のみを総動員して語り切ろうとしているのだ。そこでは新たな絵画論が試みられようとしている。

梅沢は自身の作品において、複数の異なるジャンルから引用されたイメージを、すべて、そのまま肯定しようとする。諸ジャンルへの愛に満ちた彼の手つきはしかし、同じ平面上に並べられたイメージたちを、もっとも激しいかたちでぶつけ合う。過酷な衝突の果てに本来の構造を粉砕されたイメージたちは、梅沢が設定する平面上で、まったく新しい絵画素として立ち現れているのだ。彼のブログに日常的にアップされているデジタルコラージュは、そのような絵画的語彙の生成するプロセスが惜しみなく開陳されていて、ある意味もっともスリリングな作品だと言えるだろう。近作において意欲的に取り組んでいるペインティングではさらに、これまで獲得してきた絵画的語彙を統合しようという意思が感じられる。それは新たな絵画を組織する試みなのである。
文章:黒瀬陽平

※全文提供: frantic gallery

最終更新 2009年 11月 27日
 

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