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加藤 巧 「Re-touch」
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2021年 5月 28日

加藤 巧《Dialogue (P.D.F)》2020【出品予定作品】

このたびthe three konohanaでは、加藤 巧(KATO Takumi, b.1984)の弊廊では5年ぶりの個展を開催いたします。

14~15 世紀の画家、チェンニーノ・チェンニーニの絵画技法を起点に、絵画の材料研究と並行して制作を続けてきた加藤は、ここ5年国内外の企画展を中心に精力的な発表をおこなってきました。2018年の京都芸術センターでの企画展とイギリス・ロンドンのCity & Guilds of London Art Schoolでのアーティスト・イン・レジデンス、19年の京都大学総合博物館での「タイムライン-時間に触れるためのいくつかの方法」、そして20年のVOCA展など、それぞれ技法や材料を起点にした作品を発表し、加藤が手掛ける絵画制作の範囲に広がりと深みを得る時期となりました。

この5年の活動の展開を経て、本展は「接触」をキーワードに、加藤の絵画にまつわる思考や行為を新たな枠組みで捉え直すことを狙いとします。本展の出品作品は、加藤がこの1年間に制作したもので構成しますが、コロナ禍以前と現在の制作の状況や環境に大きな変化はないと加藤は言います。ひとりスタジオの中で絵画材料や技術に触れ、思索と行為の積み重ねによって作品に仕上げていく。この日常的な制作環境を保つことを、自らの活動の中で変わらず一貫しておこなってきました。あらゆる物事に先入観なく丁寧に触れ続け、自らに受容することにより、過去と現在それぞれの時間に対等に向き合うことができる、今の時代に即した絵画のあり方の探究をさらに推進させています。

さらに、現在の社会状況の中で、改めて自らの「接触」への意識の強さに気づいたことから、本展の作品には近年見られなかった具体的なモチーフが散見されます。加藤の絵画を構築する行為に、社会への主張が明確に帯び始めたしるしであり、現代社会との接点としての絵画のあり方、制作行為の拡張・越境へと進む彼の意識が、本展の作品からは強く垣間見られます。

このコロナ禍で頻繁に見聞きする「接触」という言葉には、物理的な行為と人間同士のコミュニケーションについてイメージすることが多くなりました。加藤の絵画への対峙にはこの双方の要素がまさに含まれており、彼の絵画材料や技術との対話は、絵画のみの限られた範囲に留まらない、私たちの日常にあるあらゆるコミュニケーションに示唆を与える可能性を有しています。ただ一度ではなく、何度も思索や行為を重ねることにより理解・体得への道標があること。日常への回帰とこれまでの日常の根底にあるものを見直すために、目の前の物事に繰り返し接触することに躊躇わないこと。加藤の作品から立ち現れる、彼の様々な思考に積極的に触れていただければ幸いです。

http://thethree.net/

全文提供:the three konohana


会期:2021年6月24日(木) 〜 2021年7月18日(日)
時間:12:00~18:00(* 18:00以降はアポイントメント制/電話orメールでお問い合わせください)
休日:毎週月~水曜
会場:the three konohana

最終更新 2021年 6月 24日
 

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