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横尾忠則:東京Y字路 写真展
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2009年 10月 26日

≪桧原村≫2009年|画像提供:西村画廊 copy right(c) Tadanori YOKOO

横尾忠則はアートという枠組みにとらわれることなく、デザイン・絵画・写真・映画・演劇・音楽・文学と、様々な分野でその優れた才能を発揮してきました。

現代日本を代表するアーティストとして常に時代をリードし続けてきた横尾忠則は、1960 年代から70 年代にかけてグラフィックデザイナーとして活躍し、1981 年にはデザイナーから画家へと転向して活動することを宣言しました。70 歳を過ぎてなお、積極的に制作に取り組む横尾忠則の作品は、独自の視点から様々な主題・主張を示唆する精度の高いものばかりです。横尾忠則の、時に時代を風刺する独特な作風と変化に富む豊かな表現方法は強烈に観衆の眼と精神をとらえて離しません。そういった横尾忠則の作品は、2006 年のパリのカルティエ財団での個展等、国内にとどまらず海外からも高い評価を得ています。また今年は8 月1 日から11 月3日まで金沢21 世紀美術館で「未完の横尾忠則-君のものは僕のもの、僕のものは僕のもの」が開催され、好評を博しています。

この度の西村画廊での「横尾忠則 東京Y字路 写真展」では、横尾忠則が2 年間にわたり撮りためたY字路の写真を多数展示いたします。このY字路写真シリーズは、都市出版社発行の「東京人」で約2 年間にわったて連載された「東京23 区Y字路徘徊」で掲載されたものをはじめ、東京23 区のY字路を撮影し撮りためたものです。横尾忠則の絵画にも度々登場するこのY字路ですが、幼少期に通った郷里の模型店の場所が偶然Y字路になっていたのを写真に撮ったのがはじまりで、このY字路を自分の作品のモチーフにすべく、今日まで100 点近くも描いています。これまで誰も作品に取り入れることのなかった、どこにでもあるY字路に着目する横尾忠則の斬新さと、その独特の視点が切り取る意次元的なY字路がこのシリーズの魅力と言えます。

豊島区の高台から新宿方面の夜景を見下ろすように撮られた『豊島区』(2008 年) や、国分寺市のひっそりとした住宅地の一角にあるY字路を写し撮った『国分寺市』(2009 年) など横尾忠則の生み出す独自の世界を持った作品の数々にどうぞご期待ください。東京Y字路写真50 点以上の、縦横無尽に展開されるインスタレーションによる展示を予定しています。

なお、今回の展覧会に関連して写真集「東京Y字路」(A4 判変型 256 頁 定価3,990 円)が国書刊行会より発行されます。

※全文提供: 西村画廊

最終更新 2009年 10月 20日
 

編集部ノート    執筆:小金沢智


画家•横尾忠則による写真展。2001年より発表の《Y字路》シリーズが実際にある風景を元にしたものであることは横尾自身の口により既に広く知られているが、今回の写真展ではその実物を見ることができる。 横尾が都内を歩き回り撮りためたY字路は50点以上にも上り、言うまでもなく一つとして同じY字路はない。国書刊行会から写真集も刊行されており、手に取って見ると、すべて同じサイズで掲載されているY字路はベッヒャー夫妻の給水塔を思い出させた。ただ展覧会ではプリントのサイズに大小ありそれによっても印象が違うから、資料としてではなく自身の体験としてY字路を見たいなら画廊に足を運ぶべきだろう。壁面いっぱいに引き伸ばされたY字路からは、まるで私がその場に立っているような印象ももたらす。実在する風景であるために、創作であるペインティングのY字路とは作法が異なりながら、しかしこの世ならざる雰囲気を漂わせているものもあるのは横尾の写真ならではか。


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