| EN |

小さな工夫が醸し出すもの――京都芸術センターで開催中の『Tips』展
ニュース
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2018年 6月 23日

宮坂直樹/Naoki Miyasaka

  京都市中京区の京都芸術センターで、『Tips』と題した展覧会が開催されている。

  「ビスや釘ではなくクランプで固定する、脚立を台座代わりにする、写真をテープやクリップで止める」といった、作品を支えるささやかな技術(=「Tips」)に焦点を当てた企画だ。

  参加アーティストは、池田剛介(1980年福岡県生まれ)熊谷卓哉(1987年京都府生まれ)、小松千倫(1992年高知県生まれ)、三野新(1987年福岡県生まれ)、宮坂直樹(1987年千葉県生まれ)の5人。アプローチは違えど、いずれも「空間をつくり出すこと」に対して独創的な取り組みを続ける若手作家だ。

  「神は細部に宿る」というが、一見些細な工夫の中に、個々のアーティストの「らしさ」がより鮮明に見えてくる。

  そればかりではない。「インスタレーションを成り立たせるためのちょっとした工夫が、作品領域の境界で重要な脇役を演じていたりする」と、同展を企画した宮坂直樹は説明する。

  展示を見た人からは、(ギャラリーの)「北と南が図らずも(おそらく)対峙し合っているかのように思えた。このインスタレーションの続きは日常へ溶けてゆく、そんな予感がした」という感想が寄せられた(京都芸術センターの来場者アンケートより)。

  どこからどこまでがひとつの作品なのか――。作品と周囲との境界を曖昧にし、作品同士の相互作用を生み、会場全体の空気を変えるために、展覧会の主催者やアーティストは「Tips」に心を砕いている。そんな仕掛けも教えてくれる展覧会だ。

  会期は7月16日(月・祝)まで。今後出合うであろうアート作品の見方を変える、ちょっとした秘訣も得られるかもしれない。


【開催概要】
『Tips』展
●会期:2018年6月1日(金)~7月16日(月・祝)
●会場:京都芸術センター ギャラリー北・南
●時間:10:00-20:00 7月14・15・16日は祇園祭のため17:00まで
●出展作家:池田剛介、熊谷卓哉、小松千倫、三野新、宮坂直樹
●主催:宮坂直樹、京都芸術センター
*Co-program 2018 カテゴリーB(展覧会事業)採択企画

<関連イベント:レクチャー>
●日時:6月23日(土)16:00-
●会場:ミーティングルーム2
●料金:入場無料、事前申込不要
●概要:建築家の髙濱史子氏をお迎えしてお話を伺います。作品の内容だけでなく、設置や制作のささやかな技術に目を向けた今回の展覧会。建築分野で活躍する髙濱さんのお話を聴きながら、また別の切り口から眺めてみます。レクチャー後には出展作家を交えたクロストークも行います。

池田剛介《Translated Painting(water) #4》/Kosuke Ikeda《Translated Painting(water) #4》

熊谷卓哉《Gate Guardian》2017年/Takuya Kumagai《Gate Guardian》2017

小松千倫《グループA (ベッドパート)》2017年、撮影: 片山達貴/Kazumichi Komatsu《Group A (Bed part)》2017, photo by Tatsuki Katayama

三野新《Prepared for FILM》/Arata Mino《Prepared for FILM》

宮坂直樹《Les yeux noirs》2017年 撮影: 守屋友樹 /Naoki Miyasaka 《Les yeux noirs》2017, photo by Yuki Moriya

『Tips』展フライヤー画像
宣伝美術:石塚俊/Flyer design: Shun Ishiduka
表紙写真:三野新/Images on the front side: Arata Mino

最終更新 2018年 6月 23日
 

関連情報


| EN |