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村井進吾:黒体
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 10月 12日

「アーティストファイル2009-現代の作家たち」(国立新美術館)会場風景|撮影:山本糾|画像提供:ギャルリー東京ユマニテ

村井進吾は1952年生まれ。多摩美術大学大学院修了後、数多くの個展、グループ展に出品するなど活躍しています。近年は大分市美術館での個展で大規模な作品を発表。また、1996 年からは茨城県筑波山麓を会場に、およそ隔年開催されている「雨引きの里と彫刻」に出品し、彫刻と地域の在り方を野外彫刻展という機会を通して提示してきました。さらに、今年春には国立新美術館で開催された「アーティストファイル2009-現代の作家たち」に出品。全長42mという大空間に黒御影石の作品群で、静謐な空間を作り好評を博しました。

村井の作品はそのストイックな作品のためか、まず、石の美しさに心を奪われます。作品は黒御影石や大理石を掘削しただけの一見、簡潔極まりない形状をしています。しかしながら、それらの作品を丁寧に見ると、所々に内部に思いを馳せる痕跡がいくつも見られます。村井は従来、石塊を分割し再度組み立てた作品を発表してきました。それは二度と内部構造を見ることが出来ない、見えない部分を想像するしかない作品でした。

そのような中、近年は内部を隠すのではなく、外から全てが見える作品へと変化してきています。前出の「アーティストファイル2009」では、2002年以降の作品を展示しましたが、内部に三角錐状の切り込みが入りその中に水を湛えた作品、エッジを面取りした作品、碁盤の目を削ったような作品などが見られました。

物体である「石」に、ある構造を与えることによって、その作品はどのような見え方をするのか?さらに、闇の固体である石とはどのような物体なのか? その闇の内部を見てみたい、と村井は言います。 村井の作品は常に「石」本来が持つ、重量感や緊張感を湛えながらも、沸々と湧き上がってくる不可思議で愛おしくもあるその素材への探究心が十分に発露されたものと言えます。

今回は2 年前の前回の個展から実験的に行われてきた、表面を細かく削り取った「黒体」シリーズの新作になります。また新たな展開を見せる村井の新作をこの機会に是非ご高覧頂けますようご案内申し上げます。

(参考文献)
2007 年のギャルリー東京ユマニテの個展では、方形のエッジを面取りするように削り取った《破辺体》や、矩形の表面を基盤の目を刻むように細かく削り取った《黒体》という作品が登場する。それは単に石の内部を覗かせるという段階を超え、石そのものに迫り、石の本質を見極めようとする意識に突き動かされたものと解釈できる。村井は今、劇的な変化の最中にあるのではなかろうか。昨年の「雨引の里と彫刻2008」では《黒体》の大作2 点が石材置き場に展示されたが、切り出されたままの石に対峙し、明確な造形意識によって際立った存在感を示したことを、特に付け加えておきたい。
※福永治「村井進吾」(「ARTIST FILE 2009」国立新美術館カタログテキストpp02-04 より抜粋転載

全文提供: ギャルリー東京ユマニテ

最終更新 2009年 12月 07日
 

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