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レベッカ・ホルン:静かな叛乱
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 1月 05日

≪双子の烏≫1997年|烏の羽、モーター|Photo: Attilio Maranzano|Ⓒ2009:Rebecca Horn|画像提供:東京都現代美術館

羽や角、鏡をまとうパフォーマンスで知られるレベッカは、二十代での「ドクメンタ展」参加以来、動く彫刻や映画をはじめ、次々と新たな領域に挑戦していく精力的な活動をとおして、美術だけでなく、映画やダンスの愛好者を含む、多くのひとびとを魅了してきました。

1960年代末にスタートしたパフォーマンスは、身体機能の拡張や、他者とのコミュニケーションの回復、また神話の世界などに見られる動物や自然との交感を求めるものでした。これらパフォーマンスの際に身に纏った知覚の拡張装置は、やがてそれ自体が独立してモーターで動く立体作品へと展開していきます。その後十年以上に及ぶニューヨークでの生活の中で、物語性の強い長編の映画製作に着手、それまでに制作した立体作品や人物の動きを、映像の文脈のなかに取り組み、その意味を変化させていきます。また、ミュンスター市内の廃墟となっていた塔の内部空間を、その歴史を主題化した作品へと変容させる試みをはじめ、1980年代に母国ドイツに活動の拠点を移してからの、近現代史と直接向き合う活動は、個人の体験を社会の記憶と結びつける仕事として注目されています。近年は、作曲家ハイデン・チザムとのコラボレーションによる、音楽と光を核とした大型インスタレーションや舞台美術を手がけ、更に器具を介さぬ、直接的な身体の動きをそのまま活かした伸びやかなドローイングなど、全く自由な創造を展開しています。

本展は、70年代のパフォーマンスの記録から90年代の物語性の強い長編映画まで、映像の代表作全てと、90年代以降の平面、立体、インスタレーション等の最新作とあわせ、およそ40点によってそれぞれのメディアを関係づけながら展開してきた活動を本格的に紹介する者です。目に見えぬ自然や人間の様々なエネルギーの流れを、光や動き、痕跡など、目に見えるかたちに変換していく、その独自の想像の軌跡を、当館の大空間で堪能するまたとない機会となるでしょう。

アーティストトーク:  レベッカ・ホルンx作曲家ハイデン・チザム氏、10月31日14:00~MOT地下2F、通訳付(独⇔日)

※全文提供: 東京都現代美術館

最終更新 2009年 10月 31日
 

編集部ノート    執筆:平田剛志


ドイツの現代美術家レベッカ・ホルンの日本初個展。彫刻、絵画、映像、インスタレーションによって、文学的神秘的な世界観が開示される。機会仕掛けの立体作品は、広大な会場空間を生かして見どころがある。 ただし、映像作品は短編作品を除き、ほとんどが1~2時間近くあるため、美術館のギャラリー空間で1度に鑑賞するには限度がある長さである。だが、美術館の入場料で映画も見られると思うと割安かもしれない。会期中にはホール上映も予定されているようなので、しっかりと全編を見たい方はウェブサイトをチェックして頂きたい。


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