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O JUN・森淳一:痙攣子(けいれんし)
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 9月 23日

O JUN≪湖畔≫2009年|キャンバスに油彩|100x100cm|撮影:山田新治郎|© O JUN, courtesy Mizuma Art Gallery copy right(c) O JUN

森淳一≪minawa≫2008年|木|82x82x2.5cm|撮影:早川宏一|© MORI Junichi, courtesy Void+ and Mizuma Art Gallery copy right(c) Junichi MORI

ミヅマ・アクションにてO JUNと森淳一による二人展。本展は平面絵画によって心象風景を描くO JUNと、自然現象をテーマとして木彫を制作する森淳一の、痙攣的な感覚を追求する展覧会です。

「痙攣的」とはシュルレアリスムのアンドレ・ブルトンの言葉であり、無意識な状態の「ぎくしゃくした動き」、そして時間の介在によって「動的でもなければ静的でもない」矛盾した状態を和解にいたらしめるような美の概念だとしています。(*)それは得体の知れない密やかな衝動、その瞬間の身体反応を引き起こすものです。その概念を探求することは、けしてシュルレアリスムだけの特権ではありません。

ミヅマアートギャラリーでは初の展示となる森淳一は、大理石や木を素材に自然界の流動する運動を彫ることで知られる、いま注目の彫刻家です。レオナルド・ダヴィンチによる一枚の「水」のデッサン画から着想を得た過去の作品群は、他者(レオナルド・ダヴィンチ)を介し、二次元の「水」を彫刻するという複雑な軌跡を辿ることによって、単なる自然物ではない“何か”を捉えようと試みてきました。今回紹介する新作は繰り返されたこれらの試みをさらに発展させていますが、モチーフはもはやきっかけに過ぎず、フォルムは抽象化され、薄氷のような木彫を映す実体のない陰影へと視点が移行しています。

描かれるモチーフとの関係性において必然的に素材が変化するというO JUNは、近年改めて油彩やパステルに焦点を当てて風景画を制作しています。ありふれた場所、絵はがきのような景勝地やどこかの庭先に、O JUNが反応したものを描いています。何かの拍子に世界を目の当たりにした痙攣、その風景をできるだけ克明に二次元へと写し取る、その過程における見間違いやぶれを含めた世界の虚実を再現しようと試みています。

O JUNと森淳一、両者の作品に共通点を見出すことは容易ではありません。しかし作品に変換していくときの身体作用、考察、解釈において、お互いにどこか重なる部分があるといいます。ふたりの描く軌道の緩やかな弧が共鳴して、かすかに侵食し接点を結ぶとき、私達は芸術の高次の底を流れる原始的でささやかな水脈に気づかされることでしょう。 この展覧会が震え、痙攣を起こすことを期待しています。

(*) 「ナジャ」アンドレ・ブルトン著 岩波文庫 p312 註釈より

※全文提供: ミヅマアートギャラリー

最終更新 2009年 10月 21日
 

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