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Optimism is Ridiculous
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2016年 4月 27日

"Thin Line" 2015, 80 x 60cm, oil on canvas

ナティー・ウタリット(b.1970)はバンコクに生まれ、1992 年にシラパコーン大学を卒業し、現在もバンコクで制作活動を続けています。現代社会への鋭い考察を純粋な絵画を通して表現した作品は、the Singapore Art Museum、the Queensland Art Gallery などにコレクションされています。2014 年に東京都現代美術館で開催された展覧会「他人の時間」では、現代のタイを代表するアーティストとして選出されました。

タイの静かな巨人、ナティー・ウタリットは、コンセプチャルアーティストとしてそのキャリアをスタートさせました。伝統絵画と現代のイラストを思わせる平面性、過去と現在の価値観を融合し、世界的に注目を集めた“Illustration of The Crisis” シリーズを経て生み出された究極の静物画を、メグミオギタギャラリーにて本邦初公開します。

ナティー・ウタリットが自身の絵画スタイルのオマージュとしている16、17 世紀、絵画はまだ多くの人々にとって、魂との共鳴を図るシンプルで力強い物語を映し出すものでした。
ナティーは、急速な経済発展、政治的動乱、あるいは文化的変革の只中に生きる現代アジア人としての価値観を、絵画が美しく静謐な、魂にとって有意義なものであった頃のスタイルに託して描き出します。日本初となる今展でナティーは、鳥や兎をモチーフにした静物画を5点披露します。

古くから人間は、動物を寓話の登場人物に見立て、魂の物語を語り継いできました。傷つき横たわる小さな動物の姿は、肥大化した人間のエゴや、作家自身が突き詰め続けたあらゆる二次的なアイデンティティを削ぎ落とした先に残る、最も純粋な生命のスピリットを映し出しています。モチーフである動物達の、生きる為の無駄を一切省いたその姿態同様に、絵画としての普遍美を最小限の要素で描くことに挑戦した意欲作です。

絶対の価値観が存在しない急進的な現代社会の中にあって、芸術はかつてないほどにその存在価値を問いただされています。 ? 果たして人間にとって絵画とは何であったのでしょうか。
ナティーの作品は、絵画が、立ち止まり、相対することで「何か」を見出す装置として機能することを観るものに試します。全ての認識は投影でしかないとすれば、魂を映し出すどこまでも静謐な絵画を通して語られる心の声によってしか導きはないことを、ナティーの絵画は今に問うているのです。
ナティー・ウタリット日本初個展「Optimism is Ridiculous」、是非ご期待下さい。

http://www.megumiogita.com/cn5/cn6/cn36/pg544.html

全文提供:メグミオギタギャラリー


会期:2016年5月10日(火) 〜 2016年6月4日(土)
時間:11:00-19:00
休日:日曜、月曜、祝日
会場:メグミオギタギャラリー

最終更新 2016年 5月 10日
 

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