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Unfolding 3.11
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2016年 2月 05日

「平成鯰絵巻・参」 /2015 /25.5 x 850cm /ink on paper scroll

<オープニング・レセプション> 2月21日(日) 15:00~19:00


Unfolding 3.11 

本展では、3.11を題材とした様々な作品(写真・絵巻・インスタレーション)を公開する。

あれから5年の月日が経つが、政府やマスメディアが原発事故直後に報じたようなチェルノブイリ級の放射能被害は、もたらされていない。原発が本当にメルトダウンしたのなら、どうして甚大な被害がないのだろうか?その他にも事故当初から不可解なことが多い。3.11以降、めまぐるしく変わる政治状況を見守りながら、東北沿岸部の現地調査、官邸前デモへの参加、幕末に出回った鯰絵の文献リサーチなどを行った。「事故について、人は断片的な報道の羅列で食傷気味になるだけで、公には何も知らされないだろう。だからこそ、個人が点と点を線にして、疑問を解くしかない。」と思った。私は情報を収集し、3.11およびそれ以降の関連点を繋げ、疑問を解消していった。その結果が今回の展示の主要作品である、全長20mの『平成鯰絵巻』(全三巻)である。昨年のグループ展「その界面を泳ぐ」で発表した壱巻に引き続き、今回は初めて弐巻と参巻を展示する。

鯰絵は要石の下の鯰が地震を起こしたという民俗信仰を基に、安政地震(1855)直後に多く絵師によって描かれ、その数は250点以上にものぼる。数々の作品を見て、鯰の描かれ方に3つの位相があると感じた。地震を起こした張本人として知られ、民衆のカタルシスの対象であった鯰は、懲らしめられた後は人の味方となり、しまいには神になる。この鯰の二転三転の見立てを三陸沖地震と津波、原発事故、そして平成お陰参りに対応させることで、3.11以降の変遷を円環的に捉えられるのではないだろうかと思った。また鯰絵は、災害をひとつの事実としてルポルタージュしたのではなく、人間社会における複雑多岐な解釈の厚みを、心の機微に触れつつ、絶妙に捉えている。私は「原発事故ー汚染水海水流出ー官邸デモー復興の兆しー廃炉作業ーオリンピック騒動ーお陰参り」という3.11以降の一連の状況を読み解き、これら鯰絵と並行させながら継ぎ目なく巻物に編み込むことで、過去・現在の連続性を持った地続きの出来事として解釈することを試みた。

『平成鯰絵巻』は、時折ユーモアを交えつつ、日本の神話、伝承、倫理、宗教、風習、政治など多様な要素を盛り込んでいる。3.11およびそれ以降の日本の現状を反芻する機会になればと思っている。

<作家略歴>
高田 慶実

1980 広島生まれ
1998-2001 University of Arts London 
2012 上智大学国際教養学部 美術史専攻 卒

2014   個展            「Shred Painting 」    @ Art Trace  Gallery
2015   グループ展「その界面を泳ぐ」 @ Art Trace  Gallery

http://www.gallery.arttrace.org/201602-takada.html

全文提供:Art Trace Gallery


会期:2016年2月19日(金) 〜 2016年3月15日(火)
時間:12:00~19:00
休日:水曜
会場:Art Trace Gallery

最終更新 2016年 2月 19日
 

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