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大巻伸嗣:絶・景 -真空のゆらぎ
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 9月 13日

スペースD作品 ≪罪のない破壊者≫2009年|Photo: Shigeo Muto|画像提供:トーキョーワンダーサイト|Copyright © Shinji OHMAKI

アーティストの大巻伸嗣は2007年以来、「ごみとは何か」という問いかけを起点に「Garbage Project」に取り組んでおり、韓国、広州(中国)でのワークショップを通じて「アート」と「アートではないもの」、「美しいもの」と「美しくないもの」の境界線を考え、学生らと共に作品を制作し美術館で発表しました。

トーキョーワンダーサイトでは、2008年8月に東京都廃棄物埋立処分場、2009年2 月に大森貝塚へ訪問し、その報告会としてトークを開催。2009年4月からは、TWS青山の1スタジオを本プロジェクトのプロジェクトルームとして、他のアーティストなどを巻き込みながら、さらなるリサーチやトークを行い、様々な角度からこのテーマを掘り下げてきました。すべて新作からなる本展ではその集大成として、アートの力によって社会への提案を行います。壮大なインスタレーションにぜひご期待ください。

「絶・景 -真空のゆらぎ」
絶景とはすばらしい景色のことです。しかしこの展示では、絶なる景を生み出しています。「絶」という字は、糸と刀からなり、糸を刀で切る意を表します。その意味は、断ち切る、中断する、とどめる、こばむ、たやす、ほろぼす、きわめる、かけはなれる、わたる、よこぎる、などであり、私たちが置かれた状況の多くを示しています。また、「景」という字は、区切られた強い光、転じて光によってできる「かげ」の意を表し、ひかりとともにかげという両義性を持っています。有無の対立を超えた絶対無、陰と陽とが互いに相手を飲み込もうとする太極/無極という東洋の思想と場の量子論を背景に「真空のゆらぎ」「言葉の無い予言」「罪の無い破壊者」の3つの景をつくりだしました。

すべてのゴミを燃やして人工的に生成されたスラグによる時の大きな流れと、私たちが気付かずに作り出している地平は、身に迫る詩的体験をもたらします。

全文提供: トーキョーワンダーサイト

最終更新 2009年 8月 01日
 

編集部ノート    執筆:小金沢智


私は毎日何かしらのゴミを捨てている。だから今回大巻がインスタレー ションに用いたスラグには、私が捨てたゴミの燃えカスも含まれているかもしれない。TWS渋 谷に出現した大巻の大規模なインスタレーションは、私たちが快適な生活を送る一方で絶対的に生み出している負の部分を露わにする。ただ、その上を靴を履い て歩き、注意書きを忠実に守り、特にそれらに触れないよう気をつけ、傷つくこともない私は、結局その深刻さを明日にでも忘れてしまうかもしれない。自身が 痛みを負わなければ何が深刻かなどわかりはせず、その現実から目をそらして生きていくことは実は容易い。展覧会が露わにしたのは、そのような現代の〈哀し さ〉でもある。


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