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Konohana’s Eye #10 乃村 拓郎「On」
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Published: November 08 2015
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乃村拓郎 《杯》 欅、胡粉 8.5 x 16.0 x 11.5 cm 2015 [本展出品作品]

このたびthe three konohanaでは、乃村 拓郎(Takuro Nomura, b.1986)の個展を開催いたします。2014年の1月~3月に弊廊にて開催したDirector’s Eye #2「まよわないために -not to stray-」(ディレクター:野口 卓海)の出品作家の1人として参加しましたが、弊廊での個展は初めてとなります。

京都市立芸術大学では学部・大学院を通じて彫刻を専攻した乃村ですが、立体の枠組みや単一の素材にこだわらず、多種多様な表現を続けています。近年では年1回のペースで個展を積み重ねながら、彼の表現主題の各論を地道に実験・構築してきたスタンスを踏まえて、本展ではここ5年にわたる彼の制作活動を総体的に捉える内容となります。

乃村の制作の起点には、「彫刻」と、ものの「存在」についての考察があります。近代に成立した日本の美術における「彫刻」という領域を考えるにあたり、彼は「日本的」な要素を拾い上げることに意識を傾けています。その代表的なものが「工芸」です。彼のこれまでの作品には、工芸的な形状をした「彫刻」作品が多数見られます。素材が持つ特性から立ち現れる形状や質感に、自らの制作行為としての身体感覚と思考を重ね直接的に作品化していくプロセスに則った表現を続けています。それによって、「工芸」と「彫刻」それぞれの認識の差異を確かめ、概念を深化、展開させることで、「造形」することの新たな可能性を追求しています。

また、乃村は平面表現にも積極的に取り組み、写真やガラス板を使った作品も展開しています。現実の「存在」を間接的に置き換える、「写りこむ」ことのシステムと特性から、「存在」を考えるプロセスとして位置づけています。人工的な写りこみと、自然光や反射といった自然現象から生じた写りこみを併存させて、間接的なイメージが「存在」の認識にいかに左右しているかを提示するものです。間接的であることで、実体のイメージとの差異や矛盾がより露わになり、1つの「存在」の表裏として提示されることによって、その認識を高められると彼は考えています。また立体的な要素や形状を平面に変換させることによる、「二次元/三次元」の単純な対立軸以外の接点を探るアプローチとしても用いています。

本展では、工芸性、平面と立体の関係性、自然現象を通じて、ものの「存在」と「彫刻」の定義を多角的に捉えつつも、乃村の思考を総体的に構築する内容となります。複数の作品や異なる素材・表現媒体の間にある対照関係が、鑑賞者の知覚に触れて、ひとつひとつの根拠が組み合わされて論理性を増すことによって、ものの「存在」の認識や「彫刻」の範囲および境界線を探ることを目指します。

近年、芸術のみならずさまざまな領域の横断や変容が進むことは、時代の流れにおいて当然の理でもあります。進歩の背後にある従来の価値基準や、現在に至るプロセスを確かめ、見直していくことの必要性を改めて認識し、いまの私たちの知覚を通じて受容されていく膨大な情報から、その本質を見極めていく必要性の気づきにもつながれば幸いです。この機会にぜひご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

http://www.thethree.net

全文提供:the three konohana


会期:2015年11月13日(金) 〜 2015年12月27日(日)
時間:木・金曜 15:00~21:00/土・日曜 12:00~19:00
休日:毎週月曜~水曜
会場:the three konohana

Last Updated on November 13 2015
 

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