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重野克明:ロマンチックは止まらなかった、
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2014年 8月 18日

"お早う!" 2014, 8.6 x 13.7cm, 銅版画, ed15

この度メグミオギタギャラリーでは重野克明個展「ロマンチックは止まらなかった、」を開催致します。
重野克明は東京藝術大学で油画を学び2003年東京藝術大学大学院修士課程芸術研究科版画専攻を修了しました。その後は銅版画を中心に、油彩、水彩ドローイング、絹本作品など幅広い表現で作品を発表し、本の挿絵や舞台美術の世界からも注目を集めています。

現代を代表する表現者として多彩な技法を自在に操る重野ですが、その作家人生の原点は重野が美術予備校時代に出会った銅版画にあります。
彼にとって銅版画の技法が一番素材と格闘して産まれる物であり、そのモノクロの画面には様々な色や線や思いが込められた物でもあるといいます。インクの臭いや版画に使う様々な道具、時代が変わっても色あせることのない古き良き時代の印刷屋のような趣、そして銅版画に刻まれた線だけでなく作家自身の夢やら欲望やらといったいろんなものを押し込めてくれる版画のプレス機、それら全てが創造性の起爆剤として重野作品をより一層重野作品たらしめる装置となっているのです。

重野の作品の中では、幻想と現実、現在と過去、あらゆる境界線は意味を失い、その絵の中で起きているであろう今という一点に観客の意識は集約されていきます。
彼の描く世界は、食卓や散歩に興じる人々など、何気ない一場面でありながら、時空が歪められたようなノスタルジックな雰囲気に満ち満ちています。あるいは空想の街並を描いた作品であっても、どこかおかしみを含んだ、手に取るような現実感が漂っている ー それは現実の認識の仕方がSFのように歪められた、奇妙に胸を打つ光景です。

今展で重野は「ロマンチック」をテーマに、銅版画約15点、淡い色合いでより直接的にロマンを伝えることのできる水彩画約10点、絹と墨という素材が持つ強さと美しさが印象的な絹本作品3点、技法的に銅版画に近く、暗いテーマのものカラッと表現出来るというユニークな紙版画約20点を一挙に披露します。
6月に軽井沢ニューアートミュージアムにて開催した「ロマンチックが止まらない、」展時の出品作に加え、未発表作品やそこでの体験を基に制作した約10点の紙版画の新作も出品します。
また、ビジュアルデザインスタジオSTEREOTYPE Inc.とのタイアップにより自身の画を再構築する事をテーマとした映像作品も展示予定です。重野克明の鬼才を余すことなく感じ取って頂けることでしょう。

重野にとってのロマンチックとはあこがれであり、そうありたいという淡い願望や逃避のようなものです。一方でロマンチックなどくそくらえという冷めた心も居るのだと云います。今回あえてロマンチックと付けられたタイトルは、ロマンチックと付けた時点でロマンチックではないのではないかという皮肉めいた思いも込められています。それでも作品からは「ロマンチック」という響きについてまわる憧れと滑稽さ、そうして両者の矛盾に引き裂かれる切なさが、圧倒的な説得力を持って古紙から滲み出ています。
それは重野克明という作家が本来的に抱え込む矛盾を孕んだ愛の表出であり、私たちが人間である限り逃れることのできない愛の原型そのものです。
ーまだ意味に到達していないある種の原型を、作者が提供し観客はそれを体験するー
重野は優れた文豪が100頁で語る物語を、100本の線で一枚の画面に刻み込みます。
10月、重野克明が贈る愛憎入り乱れる究極のロマンチシズムに是非ご期待下さい。


★レセプション : 10月3日(金) 17:30 - 19:30


全文提供:メグミオギタギャラリー
会期:2014年10月3日(金)~2014年10月18日(土)
時間:11:00 − 19:00
休日:日・月曜、祝日
会場:メグミオギタギャラリー
最終更新 2014年 10月 03日
 

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