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D[di:] :「Harmony/my melody, your melody(ハーモニー/私とあなたのための旋律)」
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Published: August 14 2014
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Harmony Ⅰ 2014 ネオシルクプリント 蜜蝋、ガラス、石膏粉 1455×900mm

hpgrp GALLERY TOKYOより、作家/イラストレーター/アーティストと幅広く活躍するD[diː]の個展開催をご案内申し上げます。D[diː]は、近年イラストレーターとしてアパレル・ブランドのタイアップをはじめ、セルフ・プロダクトの開発など、新たなチャレンジを勢力精力的に行ってきました。
本展では2メートル大の草花をモチーフとした大作や、映像作家である山口崇司氏との共作で映像のインスタレーション作品など、今までにないアプローチで新たな表現を皆様へお届けします。この機会に是非ご高覧ください。


D[diː]は、「ないものねだり」を制作の根底に置いている。
2年前の個展「おそらく、永遠に片思い」は、求めてやまない動植物への「愛情」と、それに対するアレルギー反応という「拒絶」で成立していた。近づきたくて求めれば求めるほど自らが拒絶するものを追いかけ続けるなんて、痛々し過ぎると思った。しかしすぐに、本当は自分もそうしたいがおそらく出来ないだろうということに気付き、そんなD[diː]に憧れた。
本展「ハーモニー/私とあなたのための旋律」でD[diː]は不安を露呈している。
自分が今幸せだとすると、それは誰かの不幸の上に成り立っているのではないか。今生きていられるのは、自分のために誰かが死んでいるからではないか、と。多分、そうなのだと思う。さすがにもう気付いている。環境破壊や地球温暖化、終わらない戦争、そしてポスト311の世の中の空気感。何かが絶望的におかしく、ハーモニーとはほど遠い。 D[diː]が夢想する世界には人間はいない。なぜなら人間がハーモニーを壊すから。人間が理想とする世界に一番不要なのは人間という矛盾。やはり「ハーモニー」も求めれば逃げて行く、決して手に入らない「ないものねだり」ということか。

ーhpgrp GALLERY TOKYOディレクター 戸塚憲太郎

[作家コメント]
ハーモニーとは、ご存知のとおり調和という意味だが、近頃、この言葉をとても重要に感じている。
例えば、「ハーモニーが奏でられていない」…料理の一皿の中であれば、素材の味がてんでバラバラではとても美味しいとは言えないしろものになるだろうし、…男女の間であれば、ケンカや行き違いばかりだろうし、…職場であれば、各々が協力しあわないので利を得るのが難しく、…当然、音楽であれば、不協和音の集合体となり、その耳障りの悪さに気分を害することさえあるだろう。
いつまでたっても、ユートピアは実現されない。人間が文明をもちはじめて一度たりとも持続したことがない。今後私たちが生きている限りおそらく、聖書に描いてあるような天国も、仏典にあるような極楽浄土も現出することはないのではなかろうか。なにかの犠牲の上に、断片的かつ局所的にのみ存在することはあったとしても。
であれば、この世に正義や平和というものが存在するとして、しかしそれを成立させるための必要悪や誰かの不幸が不可欠であるならば、重要なのは一元的な善悪の価値観ではなく、それら全体が入れられた状況における調和、ハーモニーが奏でられていたか否かということになってくる。
私は夢想する。
それは、未来なのか、現在に存在する廃墟化した場所なのか、過去の滅びた文明跡なのかはわからない。
かつてはその存在自体がものものしく、他を威圧し圧倒していたような巨大な乗り物や人物、兵器、凶器、建造物、なんてことのない日常品まで……忘れられて、うちすてられた人工物や存在が、長い時を経て植物が寄生し絡み合い、機能していたころであれば縁遠かったであろう野生動物や自然と融合し、完全に機能停止というハーモニーを奏でることを。
経年劣化、風化、色あせて、ぼやけていく、個人的な思い出も歴史も何もかも…その先にある繁殖のハーモニー。
そういうものを想ったときに、私の中で原風景のような憧憬と懐かしさが沸きおこる。
一方で、ハーモニーとは、そのときどきで移ろいやすく、また個人的な価値観の物差しでいうと千差万別に存在する側面をもつ。
今展示で、D[diː]という一人の作家が提示するハーモニーの前に立ったときに、何かしら琴線に触れ、心地よさを感じてもら
えたのならば、「どんな不協和音で狂ったメロディであったとしても、あなたが良ければ、このハーモニーはあなたのための旋律となる」

[作家プロフィール]
D[diː]/ 作家・イラストレーター
2000年、多摩美術大学在学中に発表した『ファンタスティック・サイレント』でデビュー。二作目、『キぐるみ』発表で 「ノベルコミック」という文学スタイルを生み出し読者に衝撃を与え、その後も鋭い観察眼と叙情的な文章や、シニカルかつスイートな世界感の作品を精力的に創作。緻密なタッチのタブローを制作するかたわら、小説、漫画、イラスト、ファッション、デザインなど多分野をまたに活動する稀有な存在として、各界の著名人にも支持者が多い。

オープニングレセプション: 2014年8月21日(木)19:00-22:00

D[di:]

全文提供:hpgrp GALLERY TOKYO 
会期:2014年8月21日(木)~2014年9月7日(日)
時間:12:00-20:00
休日:月曜日・毎月最終日曜日
会場:hpgrp GALLERY TOKYO 
Last Updated on August 21 2014
 

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