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ディン・Q・レ 展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2014年 8月 14日

ディン・Q・レ
《無題(ミラノ002)》(「ベトナムからハリウッドまで」シリーズより)
2004年
カラー写真、リネンテープ
97×183cm

1968年にカンボジアとの国境付近であるベトナムのハーティエンに生まれたディン・Q・レは、ポル・ポト派の侵攻を逃れるため、10歳の時、家族とともにアメリカに渡りました。写真とメディア・アートを学んだ後、ベトナムの伝統的なゴザの編み方から着想を得て、写真を裁断してタペストリー状に編む作品を制作し、一躍注目されました。この「フォト・ウィービング」シリーズは、べトナム戦争をはじめ、カンボジアの遺跡、ハリウッド映画など多様なイメージがぼんやりと浮かびあがり、作品を見る角度や立ち位置によって見え方が変化します。
また、レは綿密なリサーチとインタビューに基づき、個人が実体験として語る歴史に光を当てます。彼の名を世界的に知らしめた映像インスタレーション作品《農民とヘリコプター》(2006年)では、自作のヘリコプターの開発に挑むベトナム人男性を中心に、ベトナム人と戦争との複雑な関係を巧みに描きました。また前回のカッセル・ドクメンタ(ドイツ)における《光、そして信じること:ベトナム戦争からの声とスケッチ》(2012年)では、元従軍画家たちが当時描いた100点のドローイングと水彩画の展示とともに、戦場での彼らの青春を活き活きと蘇らせる映像作品を発表しています。
グローバル化が進み、価値観が多様化する現代の世界において、国家や社会の「公式な」歴史の陰で見落とされてきた、個々人の体験談から歴史を読み直すことが求められています。今最も活躍するアジアのアーティストの一人、ディン・Q・レの作品を通して、より親密で多様な世界の風景と歴史が見えてくるでしょう。


全文提供:森美術館 
会期:2015年7月25日(土)~2015年10月12日(月)
時間:(月・水~日曜)10:00 - 22:00・(火曜)10:00 - 17:00(最終入館時間は閉館30分前まで)
会場:森美術館 
最終更新 2015年 7月 25日
 

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