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アイ・ウェイウェイ展:何に因って?
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 8月 31日

現代中国で最も刺激的なクリエイターの挑戦


≪中国の地図≫2004年|清時代の寺院に使用されていた鉄木|(1644-1911)|高さ51 cm、Ø 200cm|©FAKE Studio

≪コカ・コーラの壺≫1997 年|唐時代の壺 (206BC-24AD)、塗料 24cm, Ø18cm|©FAKE Studio

アイ・ウェイウェイ[艾未未]は、美術、建築、デザイン、出版など多岐にわたりクリエイティブな活躍を続けている中国のアーティストです。とくに、2007 年の「ドクメンタ12」における1001 人の中国人が参加した《童話》プロジェクト、2008 年北京オリンピック・スタジアム「鳥の巣」の設計におけるヘルツォーク&ド・ムーロンとのコラボレーションなどによって、その国際的な評価は確実なものとなりました。アイの作品は、これまでもアートや文化と社会の関係、あるいは社会全体における個人の存在などに向けられた深い洞察を拠り所としてきましたが、近年では、1999 年以降関わってきた建築プロジェクトからも距離を置き、多様な表現ジャンルの枠組みに限定されない曖昧な領域のなかで、文化、歴史、政治、伝統といった人間の本質的な課題をさらに探究する方向に向かっているように見えます。

本展は、1990 年代以降の主要作品を中心に、新作6 点を含む26 作品を展示する過去最大級の個展となります。サブタイトルの「何に因って?」は、アイ・ウェイウェイにとって現代美術への入口となったジャスパー・ジョーンズの同名の作品に由来しますが、アイの制作の背景に編み込まれた美術的、文化的あるいは歴史的な文脈の相互関連性が、展覧会を通して紐解かれることを示唆しています。会場では、立体、写真、ビデオ、サイト・スペシフィックなインスタレーションなどアイ・ウェイウェイの多様な創造活動を紹介し、「基礎的な形体とボリューム」、「構造とクラフトマンシップ」、「伝統の革新と継承」といった観点から、表現メディアを越えた「クリエイター」としてのアイ・ウェイウェイの意図や態度の本質を浮き彫りにします。

最初のセクション「基礎的な形体とボリューム」では、ミニマルアートを想わせる一連の立方体、切頂二十面体などの立体作品と中国茶のブロックによる新作インスタレーション、都市としての北京の定点観測をした映像作品を展示します。また「構造とクラフトマンシップ」では、シンプルな形体に驚くべき工芸技術が隠された《地図》シリーズ、1997 年以降続けられている《家具》シリーズ、そして美術・建築・デザインの領域を横断する立体作品《月の箪笥》を展示。最後のセクション「伝統の革新と継承」では、新石器時代、漢や唐時代の壺をモチーフにしたシリーズ、明時代の建築物のパーツを再構成したインスタレーションなどを展示します。さらに、ソーシャル・スカルプチャーとも呼べる「ドクメンタ12」での《童話》プロジェクトドキュメント映像(2 時間30 分)、新作の《シャンデリア》、《蛇の天井》などが加わります。

急速な経済発展、社会的変革の渦中にある中国に身を置きながら、独自の視点で現代を過去と繋ぎ、個人を世界と繋ぐアイ・ウェイウェイ。現代中国で最も刺激的なクリエイターが世界を見つめる眼差しを、展覧会を通して覗いてみませんか。

※全文提供: 森美術館


会期: 2009年7月25日-2009年11月8日
会場: 森美術館

最終更新 2009年 7月 25日
 

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