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建畠覚造と戦後の彫刻 かたちをさぐる
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2014年 4月 24日

建畠覚造《ORGAN》1962年

建畠覚造(たてはた・かくぞう/1919-2006)は、和歌山県有田郡城山村(現在の有田川町)出身の彫刻家、建畠大夢を父に、東京に生まれました。父大夢は、帝展の審査員や東京美術学校の教授をつとめるなど、戦前の彫刻界において官展の代表的作家として活躍した人物でした。父の影響も受け、自身も彫刻家を志すようになり、1937(昭和12)年、東京美術学校彫刻科に入学。在学中に文展で特選を受賞、同学を主席で卒業するなど、彫刻家として早くから活躍を期待される存在となります。

戦前、的確で写実性の強い、伝統的な人体表現で高い評価を受けますが、戦後、関心は新しい彫刻表現へと向かい、1953年から1955年にかけてのパリ留学によって、前衛的な造形への志向は決定的となりました。その造形活動は、イギリス人の彫刻家、ヘンリー・ムアの影響を受けた、人体を基にする有機的な形体への挑戦から、やがて身の回りにある具体的なモチーフをとり入れたユーモラスな造形物の創出へと移行し、さらに合板を素材として幾何学的な形状の中に動きを感じさせるかたちの探求へと展開していきます。

使用する素材や造形理念は時期によって変化しつつも、人間的な要素をとり入れた機知あふれる感覚は、作品に通底して見られる特徴です。その仕事は高村光太郎賞、中原悌二郎賞など、彫刻にかかわる賞を数多く受賞するなど高く評価されており、先駆者として日本における抽象彫刻の世界を牽引してきた功績は、芸術選奨文部大臣賞や文化功労者への選出によって広く認められています。野外彫刻の仕事も多く、全国各地で建畠によるモニュメントを目にすることができます。

今回の展覧会では、当館が所蔵する建畠の主要な作品を通して豊かな造形表現の歩みをたどると同時に、逝去後、遺族より寄贈を受けたドローイング類を展示することによって、その造形思考に迫ることも試みます。また、建畠とともに戦後の日本における抽象彫刻の発展に寄与した作家たちの作品もあわせて紹介することで、その展開を概観いたします。建畠を中心に、かたちの探求にいそしんだ日本人彫刻家たちの作品を通して、戦後日本における彫刻表現の展開を見ることができる貴重な機会となります。ぜひご高覧ください。


全文提供:和歌山県立近代美術館
会期:2014年4月22日(火)~2014年7月6日(日)
時間:9:30 - 17:00(入場 - 16:30)
休日:月曜日(ただし5月5日は開館し、5月7日が休館)
会場:和歌山県立近代美術館
最終更新 2014年 4月 22日
 

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