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服部憲明:Temporary Correctness
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2014年 3月 31日

 

スプラウト・キュレーションでは、一昨年に続き 2 回目となる服部憲明の個展を開催いたします。
服部は大学では金融工学を学ぶも、卒業後は一転渡英、チェルシー・アートカレッ ジに再入学しペインターの道を選びました。本展では、最新の政治哲学やプラグマティズム などもリファレンスしながら、キャンバスにレーザーで精密な穴を穿つ、独自の手法による ペインティングの新境地に挑んでいます。この機会にぜひご高覧ください。また、作品や作 家に対する詳細資料などはお気軽にお申し付けください。

[作家コメント]
我々を取り巻く情報の根本的な性質の変化を反映させながら、ペインティングの提供する視覚経験の特異な性質(鑑賞者に内在する不安定で壊れやすい記憶や感情に不条理な連鎖を与える)は、人の意識の内部において自己形成の土台となるのみならず、外部の出来事に対するより本能的な身体反応の機会として 、現代社会の中で ますます欠く事ので きない、基盤的な作用となりつつあるように思える 。この視覚体験の役割を軸に 、 ペ インティング が 扱うことが 可能な領域をイメー ジ 編集の体系として演算可能な言語的なものとして位置づけることで、固有に扱うべき非言語(感性)的な領域を仕分けすることに興味が ある。言い換えれば 、制作行為を通して解決すべ き一連の問題系の枠と は 、「 ペ インティングの現在を可能にしたものを解析/演算し、ペインティングの現在が可能にするものを提示すること」である。

4つの行程(イメージの下加工、データの編集、出力素材の加工、出力)に分解されたペインティングのプロセスは、イメージのデータ、素材の加工手順や加工機の設定情報のアーカイブにより、おおよその再現性が担保される。そして、出力素材のもつ偶発的な物質量のボラティリティは、再現性の高いツール(digital fabrication)の仲介により、表層に残るノイズとして変換される。結果としてそこで目にするものは、制御されつつある自発性(ノイズ)と、再現性の高いツールがもたらす非再現的な自発性(ノイズ)との接点であり、そこでは作品の物質的なフレームは、本来的には相容れないもの同士が一時的に折り合いをつける場として機能する。

これらの行程の背後にあるのは、ペインティングとは所詮ツールとその設定、さらには特定の初期環境(キャンバスサイズ、そして最初に与えられる素材としてのイメージなど)の演算に過ぎないという仮説であり、ペインティングの行程は目的的なレベルまで詳細に分解され、プリセットされている身体性を動力としたツール群は、異なる分野のツールと代替される。結果としてもたらされるのは再現性といった新たなツールの性質であり、ひとたび同じ状況が与えられれば、主体がだれであれ、近似されたペインティングが加工可能になる。全体性を担保すべき権威が存在しない状況において、絵画の基準はいかにして決められるべきか、今回提示されているのはその一つの試みである。

服部憲明


全文提供:スプラウト・キュレーション
会期:2014年3月22日(土)~2014年5月2日(土)
時間:12:00ー19:00
休日:日・月曜、祝日
会場:スプラウト・キュレーション
最終更新 2014年 3月 22日
 

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