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秋吉風人:no secrets
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2014年 3月 27日

naked relations
2014, oil on acrylic board
55.0 x 42.0 cm
(c) Futo Akiyoshi Courtesy of taimatz /TARO NASU

秋吉風人は一貫して絵画とは何かという古典的命題をテーマに、「絵画」という概念の解体と再構築の試みを続けて来た。 表現方法として、絵画、彫刻、映像、写真など多様なメディアを用いながらも、その背景には常に絵画に対する問題提起と、 描くという行為への執着が存在している。

* * * * *

還元主義という矩形のフォーマットからの不純な構成要素の排除は、その反視覚的かつ非物質的な作用ゆえに、絵画を欺いている。当然のことながらそのプログラムの発動においては、究極的には絵画は透明なものとして、つまり観者にとっては知覚されえぬ媒体へと近づくという隘路に陥っている。それは過去の歴史を省みるまでもなく、やがて画布や木枠といった物質的に規定していた媒材を明るみに出し、自己言及的な身振りは外部をこそあらわにしてきた。透明度の高い油絵具のみを用いて、アクリル版に描かれた秋吉風人の連作「naked relations」は、「透明な絵画」を欲したその純粋な動機に相反するように、絵画史に繋留してしまうという捻れを生じさせている。
抑制された筆致がもたらす美的かつエフェメラルな視覚効果は、作品がもつ特徴の一端にすぎない。むしろそこでは、作品の構成要素が透けてみえることによって、表層のミニマルな形態と限定された色彩すべてが表も裏もなく折り重なり合い、さらに支持体を透過した壁面さえもが、光学的な複雑さを伴って一挙に受容されてしまう。とはいえ、透明性の希求がもたらしたその関係の猥雑さは、決して矛盾するものではない。なぜならば、身体を介したフェティッシュな=不純な筆致のうちに、純粋な絵画への練成を賭していく行為こそ、秋吉自らが常に課す画家の使命であるからだ。私たちは、その過剰ともいえる感覚の全的な乱反射を絵画として、生産−制作の残余である物質の瞬きに対峙することとなる。

テキスト:森啓輔(ヴァンジ彫刻庭園美術館学芸員)
VOCA展2014 カタログより転載

[作家プロフィール]
秋吉風人 (あきよし ふうと)
1977 年大阪府生まれ。名古屋芸術大学洋画科を 2001 年に卒業。2003 年に同大学の大学院を修了。 2011 年より財団法人吉野石膏美術振興財団在外研修助成、文化庁新進芸術家海外研修制度の助成を得て、現在はベ ルリンを拠点に活動。 近年の主な展覧会に、2013 年「A FAITHFUL ANTINOMY」Longhouse Projects/ニューヨーク、2012 年「THE ECHO」 Kunstraum Kreuzberg, Bethanien/ベルリン、2011 年「こんなにも贅沢な沈黙」TARO NASU/東京、2010 年「あいちトリエン ナーレ 2010」愛知県美術館/名古屋、2010 年「絵画の庭」国立国際美術館/大阪、2009 年「greedy life in the room that bores me」Office Baroque Gallery/アントワープ、など。 また 2014 年は「VOCA 展 2014」上野の森美術館/東京へ参加。

*Reception for the Artist : 2014年3月15日(土) 18:00-20:30


全文提供:taimatz
会期:2014年3月15日(土)~2014年4月5日(土)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月曜、祝日
会場:taimatz
最終更新 2014年 3月 15日
 

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