| EN |

Traces of Disappearance
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2014年 1月 24日

Naoya Hatakeyama, “Mont Ventoux” 2005 / 2013

エスパス ルイ・ヴィトン東京は、アンヌ&パトリック・ポワリエ、カスパー・コーヴィッツ、畠山直哉、袁廣鳴(ユェン・グァンミン)による『Traces of Disappearance(消失の痕跡)』展を開催します。

ミュリエル・ラディックとエヴァ・クラウスの2人のキュレーターによって企画された『Traces of Disappearance(消失の痕跡)』展は、観る者に儚く壊れやすい世界の現状について考えさせます。多種多様な表現メディア、芸術的手法、話法を用いることで、これらのアーティストたちとその作品が提起する数々の疑問は、今まさに消失しようとしているものを捉えるきっかけとなるでしょう。

エスパス ルイ・ヴィトン東京のために制作された作品群は、とりわけ儚さや時の流れという問題を提起します。人と同様、永遠ではなく、「時」という概念に縛られている人工物─今回登場するアーティストたちは、保存と変質・腐敗・消滅の相反を起点とし、哲学的概念、美術的な観点から「時」という概念にアプローチします。 「消失」に重きを置いたこれらの作品は、沈思黙考の願望を刺激します。また、ひとつのフロアで展開される作品群は、記録された集合的記憶と、記録されない集合的記憶(アンヌ&パトリック・ポワリエ『Soul of the World』)、「聖地」(カスパー・コーヴィッツ『The Sheer Size of It』)、理想の地(畠山直哉『Mont Ventoux』)、果てはデジタルメディアを用いて再現された人工的な自然界(袁廣鳴 『Disappearing Landscape-Reason to Be a Leaf』)を巡る旅へと来場者を誘います。

エスパス ルイ・ヴィトン東京は、時の流れというこの異色の探求にあたり、準備期間全体を通じて温かい継続したご支援をいただいた、キュレーターのミュリエル・ラディックおよびエヴァ・クラウス両氏、アーティスト各位、ならびに在日オーストリア大使館、在日フランス大使館、台北駐日経済文化代表処の皆様に厚く御礼申しあげます。

[作家プロフィール]
畠山直哉
1958年、岩手県陸前高田市に生まれる。1997年には木村伊平写真賞、2001年には毎日芸術賞を受賞。同じく2001年、ヴェネツィア・ビエンナーレの日本館における『ファースト&スロー』展に参加。2011年に東京都写真美術館で開催された個展『ナチュラル・ストーリーズ』によって芸術選奨文部科学大臣賞を獲得。なお、同展はアムステルダムのハウス・マルセイユ写真美術館、次いでサンフランシスコ近代美術館(2012年)に巡回した。2012年のヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展では、建築家の伊藤豊雄をコミッショナーとする日本館の展示『Architecture. Possible here? Home-for-All』に参加、重要な役目を果たした(なお、この日本館は「金獅子賞」を獲得)。『LIME WORKS』(青幻社、1996年、2008年)、『Underground』(メディアファクトリー、2000年)、『TERRILS』(Light Motiv、2011年)、『BLAST』(小学館、2013年)をはじめとする数々の写真集のほか、講演・講義集の『話す写真 見えないものに向かって』(小学館、2010年)も出版している。

カスパー・コーヴィッツ
1968年、オーストリアに生まれる。ウィーン応用美術大学で美術学修士号を取得。ロサンゼルス(米国カリフォルニア州)とベイルート(レバノン)を拠点に活動し、ベイルートではAUB(ベイルート・アメリカン大学)の助教授として教鞭も執っている。これまでにニューヨークのISCP(International Studio & Curatorial Program) 1998/2009など数回にわたり、アーティスト・イン・レジデンスを務めるとともに、ポロック・クラズナー財団助成金(2009年)など数々の賞を受賞し、助成金を勝ち取ってきた。彼の作品は、サーチ・ギャラリーでの個展『Body Language』(ロンドン、2013年)やMAK(オーストリア応用美術博物館)での『sunset:delayed』(ウィーン、2007年)など、欧州の数多くの展示会に展示された。上記の両展示施設は共に彼の作品を収蔵している。多岐にわたる作品群には、絵画、彫刻、インスタレーション、ランドアートが含まれる。風景に焦点を合わせ、自然と深く結び付きながら、彼は非伝統的な素材の探求を通じて、アイコニックなイメージの見直しを迫る。

アンヌ&パトリック・ポワリエ
2人はパリの国立装飾美術学校で学んだのち、ローマのヴィラ・メディチに滞在した(1967-1971)。1970年には、大阪万博のフランスパヴィリヨンにおける創作のために来日。帰国の途中で、アンコールワット遺跡を訪れたことが契機となり、「文明の儚さ」について考察を深めるようになる。『ドクメンタVI』(1971)以降、文学、哲学、歴史、考古学、建築にインスパイアされた要素が交錯する2人の作品は、国際的に評価され世界各地で紹介されてきた。 2人は40年間の共同制作の傍ら、多くの展覧会を開催している:ノイエ・ガレリー・ザムルング・ルードヴィヒ(アーヘン、1971)、ノイエ・ベルリナー・クンストフェライン(ベルリン、1977)、ジョルジュ・ポンピドゥー・センター(パリ、1978)、ニューヨーク近代美術館(ニューヨーク、1979)、フェスティバル・ドトンヌ(シャペル・ド・ラ・サルペトリエール、パリ、1983)、キエーザ・サン・カルポフォーロ(ミラノ、1984)、ウィーン近代美術館(ウィーン、1993)、ゲッティー・リサーチ・インスティチュート(ロサンゼルス、2001)。そして日本でも2度作品展を開催している:西武美術館(東京、1985)、ギャルリー・ドゥ・フランコニー青山(東京、1991)。 近年ではイタリアとフランスで数多くの庭園プロジェクトに取り組み、現在もイタリアのゴルゴンゾーラで大規模な庭園プロジェクトが進行している(『イル・ジャルディーノ・デッラ・メモーリア』)。

袁廣鳴(ユェン・グァンミン)
1965年台湾・台北に生まれる。袁廣鳴は、台湾におけるビデオアートのパイオニアである。1984年からビデオに取り組んできた袁廣鳴は、1997年にカールスルーエ公立造形大学でメディアアートの修士号を取得。現在は、国立台北芸術大学の新媒体芸術学系副教授を務めている。
ユェンはこれまで、下記のアジア・欧米各地の様々な展示会に招待参加してきた。第50回ヴェネツィア・ビエンナーレ(台湾パビリオン)での『Representing Taiwan』、サンフランシスコ近代美術館での『010101: Art in Technological Times』、日本のICCビエンナーレ(1997年)、中国の広州トリエンナーレ(2005年)、英国のリヴァプール・ビエンナーレ(2008年)、ニュージーランドのオークランド・トリエンナーレ(2004年)、シンガポール・ビエンナーレ(2008年)、台北ビエンナーレ(1998年、1996年、1992年)、韓国の光州ビエンナーレ(2002年)。
彼の作品は世界各国の公共および個人コレクションに収蔵されている。また、ユェンは台北市立美術館の収蔵品委員会、台北美術賞(台北美術奨)、台北県美術賞(台北県美奨)、ヴェネツィア・ビエンナーレ(台湾パビリオン)パブリックアート、および米国のアジア・ソサエティ芸術賞の審査員も務めた。
作品においては、象徴的なメタファーを技術的メディアと組み合わせ、現代的な存在の有り方を雄弁に表現するとともに、人間の精神と意識を深く探る。


全文提供:エスパス ルイ・ヴィトン東京
会期:2014年1月18日(金)~2014年4月13日(日)
時間:12:00-20:00
会場:エスパス ルイ・ヴィトン東京
最終更新 2014年 1月 18日
 

関連情報


| EN |