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磯崎新:作動する迷宮
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2014年 1月 24日

Obscured Horizon
2007
Ink on tracing peper

MISA SHIN GALLERYでは 2014月1日24日(木)から3月8日(土)まで、磯崎新の2度目の個展となる、作動する迷宮 Labyrinth in Motionを開催いたします。

磯崎新は、その建築のみならず活発な評論活動、芸術文化活動においても広く知られています。磯崎はキャリアのごく初期の段階からアートの文脈で建築を思考し、その概念を逸脱するような作品群を制作しています。それは、固定すべきものとした概念をもつ建築において、動くイメージの表現や、時間とともに変化する過程に、建築家として主体的に介入するにはどうすればいいかという問いから始まっています。

日本のアバンギャルド運動が収束に向かう1960年代後半は、美術、音楽、映像、デザインなどさまざまな芸術領域にパラダイム変換とも言うべきシフトが起こり、それらの領域が従来の枠組みを超えて活動したインターメディアな時代でもありました。1966年、磯崎が展示デザインを行った展覧会「空間から環境へ」は、さまざまなジャンルのアーティストが観客にインターラクティブな体験を強いる作品によって構成され、それは「環境(エンバイラメント)」として彼らの活動をつなぐキーワードとなりました。

ミラノ・トリエンナーレのために制作した「電気的迷宮」(1968年)は、16枚の湾曲したパネルが赤外線センサーによって観客の行動に反応して動くというサイバネティックスが組み込まれたインスタレーションで、その後の大阪万博お祭り広場(1970年)の構想に繋がっていくコンセプトが集約された作品でもありました。建築やアートをとりまくドラスティックな時代の変化の中で、磯崎にとって「電気的迷宮」は、テクノロジーの問題や装置空間のデザインについて、また変化する都市の生成についてなどを考える契機となりました。

都市は人が集まる容器にはなるが定住する場所ではない。それにも拘わらず都市における建築は固定するものとして存在しており、それが建築の概念になっている。都市とはイベントによって生成される空間である

本展では、「色彩と空間」「空間から環境へ」展に出品した「福岡相互銀行大分支店」 (1966年)、住み手の動きにロボットのように対応していく装置だけで構成されているレスポンシブ・ハウス「A邸」(1969年)、カルフォルニア州の砂漠に作られた「Obscured Horizon(砂漠の寝所)」(2007年)、また建築を演劇的なパフォーマンスの場に見立てる提案としての移動コンサートホール「アークノヴァ」(2012年)に関連したドローイングおよび模型などを展示します。

1960年代後半から進行中のプロジェクトまで、磯崎の一見多様な仕事の取り組みと見えるものは、固定しないものとしての建築、広義の建築という考え方と緊密に結びついています。迷宮(ラビリンス)が作動するような、磯崎新の半世紀以上にわたる活動とアートとの関係を探る「Labyrinth in Motion」にどうぞご期待ください。

[作家プロフィール]
磯崎新

1931 年大分市生まれ。1954 年東京大学工学部建築学科卒業。1963 年磯崎新アトリエを設立、現在に至る。
大分県立中央図書館をはじめ、60 年代に大分市に集中して実現された建築群から、90 年代の国内外各地、バルセロナ、オーランド、クラコフ、岡山県奈義町、京都、奈良、ラ・コルーニャ、山口県秋吉台、ベルリンなど、そして今世紀に入り、中東、中国、中央アジアをはじめとする数多くの最新作まで、どの思想領域にも属さない個人的な思考と空間の展開でありながら、政治・社会・文化に他のどの建築家よりも深く觝触しつつ、それを建築において開示してきた。すなわち建築がその始源からもつ潜在力をとり出してみせることで、他領域の知に対しても大きな影響を与えてきた。また評論や設計競技の審査を通じて、世界のラディカルな建築家たちの発想を実現に導くうえでのはかり知れない支援を果たした。半世紀を越えるその活動は、思想、美術、デザイン、音楽、映画、演劇など常に建築の枠組みを超えて、時代や他領域を交錯する問題提起を生み出している。

オープニングレセプション:2014年1月24日(金)18:00 − 20:00


全文提供:MISA SHIN GALLERY
会期:2014年1月24日(金)~2014年3月8日(土)
時間:12:00ー19:00
休日:日・月曜、祝日
会場:MISA SHIN GALLERY
最終更新 2014年 1月 24日
 

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