関西ではすでにキャリアのある伊東宣明がついに東京で個展を開催する。
今回の出品作は『芸術家』と『預言者』。『芸術家』は、過去の芸術家の金言から１０個をピックアップし、それを記憶して１分間という制限時間内に大声で叫ぶ訓練を女性アーティストに課すという約３０分の映像作品だ。その言葉自体は心を打つものだが、無意味な制限のもとに記憶し反復しているうちに、彼女の精神がポジティブな方向へと導かれていく。無意味な作業が個人に意味をもたらしていく様をコミカルに描く作品だ。最後には感動のフィナーレを迎えるのだが、それが無意味な作業によって成し遂げられたことは、やはりバカらしい行為に見える。しかし、我々の日常とはそんなものだ。自己啓発的作業を過剰な演出によって劇的に演出することで、私たちの精神の単純さを愛おしく描く。
『預言者』は、預言者が紡ぐ言葉を手で口真似するという作品。どこからともなく預言者に訪れる言葉をもう一度トレースすることで、逆に言葉を先鋭化させ、コミカルな手の動きに洗脳されていきそうになってしまう。これもまた、私たちの単純な精神を斜めから抉る作品だ。
私たちの平凡な精神に変化球を投げつける伊東の作品に、まずは一度洗脳されてみよう。 　　　　　　　　　　

花房 太一（アートコメンテーター）

［作家プロフィール］
伊東宣明 Nobuaki ITOH
81 年 奈良生まれ
06 年 京都造形芸術大学 / 映像芸術コース 卒業
09 年 京都市立芸術大学大学院 造形構想　修了
主な発表歴
09 年03 月　NONAME - YOKOHAMA　< 横浜ZAIM / 神奈川>
10 年04 月　レゾナンス展　< サントリーミュージアム / 大阪>
12 年04 月 　京芸TransmitProgram#3《Me’ tis - 戦う美術-》< ギャラリー@KCUA / 京都>
13 年 05 月「 芸術家」　< アンテナメディア　/京都 >( 個展 )
13 年09 月　岐阜　おおがきビエンナーレ2013　
13 年09 月　ニュイ・ブランシュ KYOTO2013< ギャラリー@KCUA/ 京都> 　他多数

【アーティストトーク】
「私の事とか、京都のアートとか色々紹介します。」　
2月2日（日）19:00 - 21:00 （18:30 Open）
出演：花房 太一 ( アートコメンテーター)
有賀 慎吾 ( アーティスト）
特典：展示作品《00-99 Kyoto2013 Ver.》DVD 付
※サイン/ オリジナル表紙ドローイング付