| EN |

榎本耕一:21世紀旗手
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 12月 20日

「土金水」(どごんすい)
2013, oil on canbas, 227x181cm
(c)Koichi Enomoto Courtesy of TARO NASU

毒を食ったら美しいものを生み出すことができる気がする。 水銀を飲んだら爆発的な美が筆から滲み出たりするだろうか? 何にせよ、美は痺れさせる。

友達と会って、芸術の話をするか、芸術的な会話をする。 独特な才能を持つ素晴らしい肉体!それも沢山の。 何度もの疲弊とか絶望とか阿呆らしさを乗り越えて同じテーブルで飲む金色のビール。 愚かさがさらに何もかもを美しくする。それはレンズの様に美を拡大させる。 誰もがその中心に向かってにじり寄る。

美がビンから注ぎ込まれる。 美を飲むと根源が健康になる。 ズタズタのズボンを履いていても。なみなみと注がれた美が光を飲んでいる。 ほとんどが夜の中にある。 巨大な暗闇の中でささやかに生きていることを知っている。 主役は夜。その中で汚れた手が動いている。爆笑もある。 そうやって絵を描く。絵の具を食い、油を飲み、イーゼルもアトリエも食って、一発の絵に落とし込む。そうやって絵を描く。

関係と関係の関係と関係自身との関係性なんて関係ない。 各人の個性由来の情報の結びつきの中で熱くなったり泣きそうになったりしている。 すかさず伸ばす握手の手。核の部分を偽物にすり替えた。はっきりとものが言えない空気。 時々は、嫌いな人が誰もいない幸福な状態。

冬が来て、教室の黒板の前でメガホンを持って才能!と叫ぶ。 木枯らしが窓を殴る。 子鹿の様に震えながらザリガニの様な体臭を放ちながらおずおずとひとりにひとつだけの包みを抱えて前に出る、恐れながら。 ディスイズイット、ワンフォーオール、とか言いながら。

望んでない者の足音が自分の部屋のドアの前でピタリと止まる。 運命が大きな握り拳でドアを叩く。家全体が震え、飼い犬が震え上がる。 自分の精神の屋台骨が崩れ落ちかける。不安だけヤグラの様に立ち上がる。 狼煙を上げる。血がついた狼が集まる。もう神じゃない。

古い地図を旗にして歩く。 暗い重い雲が鱗のある腹を見せて蠕動している。足元に役を終えた牡丹の花弁がボタンボタンと落ちる。 眠っていた鹿が起きる。前足が折れる。東京タワーのように。死んだあれこれ。死線の道標。童貞と聖性。シャッター音地下鉄。走り抜ける移動。 路線廃止鉄橋の撤去、残留する鉄ヲタの地縛霊。たえまないシャッター音、放射性のフラッシュ。

いずれにせよボロボロの旗を運び歩く。いざっても進む。禁色を塗る。効果よりも筆の一打。日の目を見ずくたばった脳内インパルス様々な愛情の試み。そうやって絵を描く。 ありがとう。よろしくおねがいします。
榎本耕一

[作家プロフィール]
榎本耕一| Koichi Enomoto
1977年大阪府生まれ。金沢市立美術工芸大学卒業。同大学院博士前期課程中退。現在は京都にて活動、制作中。近年の主な展覧会に“GOOD LIFE” (2013-2014年 sprout curation)、“タイガース”(2012年taimatz)、“ふだらくとかい the captain of the ship”(2011年TARO NASU)など。

Reception for the Artist : 2014年1月25日(土) 18:00-20:00

全文提供:TARO NASU


会期:2014年1月25日(土)~2014年3月1日(土)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月曜、祝日
会場:TARO NASU

最終更新 2014年 1月 25日
 

関連情報


| EN |