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櫻井智子:raise a storm of excitement
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 12月 13日

蝦蟇鉄拐図 (ディテール)
1950×1950mm
和紙・墨・朱・金彩
2013

2014年1月4日(土)から1月15日(水)までの11日間、gallery nearにて、櫻井智子 展「raise a storm of excitement」を開催いたします。 主に墨を用い、空想上の生物や現存する生物、果ては微生物までを精緻に描く櫻井智子は、近年、毎年のペースで個展を開催、東京・大阪の大手 百貨店でのグループ展にも多数出展し、注目を集めてまいりました。2011年には「KIAF 10th アートフェア」(coex / 韓国・ソウル) にも出展し、 その卓越した技術により描かれる生物達の類い稀なる表現は、海外でも高い評価を獲得しており、今後が更に期待される作家であります。 櫻井の表現における最大の特徴は、その緻密に描かれる生物の描写に加え、金彩や朱を用い、新たに吹き込まれる生物たちのフォルム、しぐさや 表情であります。足音を忍ばせ、獲物の次の動きを見逃さないようジッと見つめているような姿の「シマハイエナ」や、「シルバーバック」(ゴリラ)では、 胴体部分を水墨特有のぼかしで描くことにより、山水画を組み合わせたような画面を表出し、約2m四方の大作「蝦蟇鉄拐図」では、右目を「月」、 左目を「太陽」として表現することで、宇宙誕生の意味を内包させ、口中の舌には波渦を模するなど、その画面のサイズ感と共にスケールの大きい ダイナミックな作品を生み出しております。櫻井の描写におけるオリジナリティは、水墨画の伝統的な技法や洗練された筆使いといった卓越した 技術と、描こうとするモチーフを丹念に見る観察眼、様々な角度から生物たちを理解しようとする探求心により、他に類を見ない水墨表現として 唯一の世界観を構築しております。 櫻井は活動当初、筆ではなくペンとインクを用い、「麒麟」や「龍」といった空想上の生物を表現の対象として描いておりました。ペンとインクでの 表現における自らが感じる限界と、作家としての更なる高みを目指す先に見た、筆と墨での表現が、描く対象となる生物へも影響を与え、空想上の 生物から、現在のモチーフとなっている現存する生物へと移行することとなります。作家として表現に対して真摯に向き合う姿勢は、モチーフと 対峙する意識ともリンクし、画面上における一切の装飾を意図的に排することで、モチーフが生物として持つ気高さや美しさ、自然界が生み出す 神秘性をより際立たせているようであります。ペンから筆に持ち替えることで得た表現方法の幅に加えて、生物に対する深い愛情と意識は、櫻井に とっての表現を更なる高みへと押し上げ、画面に現れる荘厳さを備えた生物たちからは、神々しさをも感じさせるのであります。 本展は「raise a storm of excitement」(興奮の渦を巻き起こす)と題され、新作を含めた2009年から2013年までの大小様々な作品で構成 されます。古来より日本に存在する紋様「巴紋」は、水が渦を巻く様として解釈され、火災除けの紋様などに多く用いられてきました。本展に登場する 生物たちの身体に施された「渦」は、そのうねりが持つエネルギーの強さと、たくさんの時代環境の変化と共に進化を繰り返し、生き抜いてきた生物 たちの生命力そのものを象徴しているようであります。自然エネルギーと生物が持つ生命力とが見事に融合された、櫻井が描く画面が放つ 神々しさは、櫻井自身が述べる「生物を創作する時、私はいつもどこかで神格化させたいと思い続けていた。」という言葉とリンクするように、古代 から人類が世界各国で様々な生物を「神」や「神の使い」として崇め、奉ってきたことで証明されているのではないでしょうか。我々人類が、何かに 縋らなければ時代を繋いで来られなかった歴史背景には、必ず生物が重要な役割として存在しており、櫻井が生物たちと人類が関わってきた 歴史を掘り起こし、丁寧に表現した生物たちと対峙することで、我々もまた、生命が持つ大きな運命の渦(うねり)の中で生かされている事に気付かされるのであります。

[作家コメント]
生物を創作する時、私はいつもどこかで神格化させたいと
思い続けていたのだ。昔から創作してきた作品と現在の創作
とがようやく繋がりそして今、確認していることが支柱に
なって生物を通じてカタチになっていくことを・・・。

[作家プロフィール]
櫻井智子| SAKURAI Tomoko

【 主な個展 】
2012 年 「-OUTLAW-」(Note Gallery / 大阪)
2011 年 「クエナイモノ」(neutron tokyo / 東京)
2010 年 「不均等な呼吸」(neutron kyoto / 京都)
2009 年 「わらべの目」(neutron tokyo / 東京)
「まほろば動物園」( 文椿ビルヂング / 京都)
2008 年 「古くからの住人」(neutron kyoto / 京都)

【 主なグループ展 】
2013 年 「東西当世数寄侍」( 白白庵 / 東京)
「匠と侍」( 阪急うめだ百貨店本店アートステージ/ 大阪)
「new year art exhibition in 枚方宿」(Note Gallery / 大阪)
2012 年  「アートショップ」( 西武渋谷店B館8階美術画廊 / 東京)
現代茶ノ湯スタイル展「縁 - enishi - 」 ( 西武渋谷店B館8階美術画廊/ 東京)
「うつくしきものミニアチュールの魅力」(JR大阪三越伊勢丹アート解放区 / 大阪)
「神戸原田の森美術館 東京展」
2011 年 「来るべき世界」(neutron tokyo / 東京)
「サムホール展」( ギャラリー空 / 東京)
「SM展」(GALLERY EDEL / 大阪)
「animal 展」( ギャラリー空 / 東京)
2010 年 「小山秀司氏コレクション」( 麗門 / 大阪)
「TAGBOAT Young Artisis Japan vol.3」( 東京)
「SM展」(GALLERY EDEL / 大阪)
2008 年 「フィリシモ社 Japan C in NY 掛け軸出品」

【 アートフェア 】
2011 年 「 KIAF 10th アートフェア」(coex / 韓国・ソウル)


全文提供:cafe dining near ∽ gallery near
会期:2014年1月4日(土)~2014年1月15日(水)
時間:12:00 - 22:00(最終日 - 17:00)
休日:木
会場:cafe dining near ∽ gallery near
最終更新 2014年 1月 04日
 

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