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グリッサゴーン・ティンタップタイ:Now Showing
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 11月 21日

グリッサゴーン・ティンタップタイ
「Now Showing」
2009年
21min.
ビデオ

グリッサゴーン・ティンタップタイは1979年 タイ・スリンで生まれました。幼少時にバンコクに移住して以来、寺で小僧としての生活を続けています。Pohchang Academy of Artsを卒業後、アピチャッポン・ウィーラセタクン設立の映画製作会社 キック・ザ・マシーンにてアシスタントとして経験を積み、アピチャッポンの作品に俳優としても出演しています。
近年では、ロッテルダム国際映画祭をはじめ、ハンブルグ映画祭、バンコク実験映画祭など、数多くの映画祭で自作が上映され、日本においては、2011年にトーキョーワンダーサイトのレジデンスプログラムに参加、展覧会「アートの課題2011ー僕らはいま一体どこに立っているんだろう?」で作品を発表しました。
日本初個展となる本展では、初期作品から最新作までを俯瞰し、これまでの歩みをその代表作で振り返ります。


グリッサゴーン・ティンタップタイ「Now Showing」展に寄せて

本展共同企画者:宮津大輔

グリッサゴーン・ティンタップタイの作品には、大災害に見舞われたタイ人の生まれ変わりである少女を森から連れ帰る「Dissonant frequencies」や、震災後の東北を写した「9.8 Riichter」のように、精霊信仰と輪廻転生思想からの影響が色濃く見て取れる。また、雨乞いと五穀豊穣を願いロケット状の花火を打ち上げるパンファイ祭や、移動映画館の1日を追った「Into the sky」や「Now Showing」では、日々繰り返される単調な「ケ」と、非日常的な「ハレ」を描いているが、それはまるで日常生活に潜む小さな「生」と「死」を露にしているように思われる。
彼が紡ぎ出す映像世界の特徴は、ドキュメンタリー(真実)とフィクション(虚構)が混ざり合いながら、西洋的な二項対立に縛られることなく大らかに描いている点である。また、「現在・過去・未来」という時間軸を物理的な流れではなく、変化し移ろいゆく現象や存在の上に還流するものとして捉えていることであろう。
それらは、僧院で常に仏法(教)と接しながら生活し、撮りためたフィルム(やデータ)から場面=時間を切り取り、つなげる行為=編集を実践する中で、醸成されたものではないであろうか。
初期作品「Now Showing」では、師であるアピチャッポン譲りともいえる編集の妙が際立っているが、近作では一転して長回しを効果的に使い、鬱蒼とした森や荒廃した被災地を、その気温や湿度まで感じさせるが如く描いている。「9.8 Riichter」の静謐な佇まいは高橋由一の「愛宕山より品川沖を望む」のようであり、ミシェム・イーピンソイによる風景画のような「Nature of Aberration」と共に、まるで一幅の絵画を思わせる。
出演者達は時に俳優のようであり、記録映像にたまたま写り込んだ市井の人にも見える。画面からカメラを見つめる彼らの視線は、その先にいるグリッサゴーンを意識しているかのようである。「Dissonant frequencies」で撮影を担当し、共作作品もあるアーティスト田村友一郎はそんな彼を共同体の外からやってきた異質な体験をもたらす「まれ人」と呼んだ。
私達の住む日本が大きく変わりゆく「今」こそ、「まれ人」グリッサゴーンの作品が示唆するところは、決して小さくないように思う。

オープニングレセプション:11月16日(土)18:00-20:00


全文提供:ARATANIURANO
会期:2013年11月16日(土)~2013年12月21日(土)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月曜、祝日
会場:ARATANIURANO
最終更新 2013年 11月 16日
 

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